社員さんが会社を退職された後のトラブルというのはよくありますよね。
有能な社員ほど、失ってしまうと色々な問題が出てくるのはよくあることです。
他の会社さんから相談があったので、社員さんが退職されても会社で守るべき「職務著作」についてのお話をしたいと思います。
会社で作った書類の著作権は誰のもの?職務著作って?
会社で作ったさまざまな書類やデータがあると思います。
それらの著作権は、そもそも誰のものなのか。
社員さんのものであれば、「会社を辞められた時にどうなるの?」という疑問があると思います。
そのためのルールがあり、そのルールというものが「職務著作」なのです。
会社の命令で会社のために作った書類だったり、データだったり、内容だったりは「会社のものですよ」というルールになっています。
その職務著作についてのお話です。
例えば、ホームページ制作の担当者が会社のためにホームページを作ったとします。
そのホームページ制作の担当者から「私、会社を辞めるので私が作ったホームページを全て消してもらって良いですか?」と会社を退職する時に言われる。
そう言われると、会社側としては困りますよね。
経営者は「そんなことを言われるとは思ってなかった」と驚いてしまいます。
だからこそ「職務著作」があるわけです。
ホームページ制作の担当者ご本人が写真として出ていればカットしなければいけませんが、基本的に作ったものを全て削除することはありません。
あるいは、請求書の工夫をするために社員さんがデザインして請求書のフォームを作ったとしましょう。
そういった請求書のフォームを使用するのに「これは私が作ったものなので、著作権料を払ってもらいます」という話になると会社側としては困ってしまいます。
そういったことがないように「職務著作」があるのです。
「仕事のために会社の命令で作ったものには職務著作がある」という前提を、社員の皆さんに理解していただければ良いと思います。
職務著作があったら対価は不要?退職する人が要求してきたら
職務著作があればお金を払わなくて良いのか。
言葉は悪いですが、社員をこき使い放題なのか。
逆に、会社を退職する人がこれだけ頑張って後の人のために残しているのだから「お金をください」と要求されたらどうするのかというお話です。
そういった問題の時に、なぜ会社を辞める人は過去に自分が作った制作物に対して、自分のものであると主張するのか。
色々なご相談事例を見てきましたが、おそらく退職される時に今まで上手くいってるように見えても、感情的なしこりが実はあったのではないかと考えられます。
在社中に円満な関係ではなかったため、せめて「もらえるものはもらっておこう」とお考えになる方がいらっしゃっても不思議ではありません。
会社にいてモチベーション高く頑張ってくれている時は、会社のためにいろいろな努力をしてくれたのに、いざ辞めるとなると手のひらを返すように自分の権利ばかりを主張される。
その態度の落差に経営者が戸惑うことが多いと思います。
会社を辞める社員さんから「私が作った記事を全て削除してほしい」と言われることもあるかもしれません。
「そもそも会社に居なかったことにしてほしい」と会社に居た痕跡を消すために言われた、というご相談が多いです。
しかしながら、Webサイトで100ページほど書かれている記事を全て消すのかというと、現実的には削除するわけにはいかないでしょう。
元社員さんが今まで作ったページを削除してほしいというなら、逆に経営者は「あなたが作った分の対価として支払ったお給料分を返してほしい」と言いたくなってしまいますね。
それでは水掛け論になってしまい、キリがありません。
やはりそういうトラブルにならないためにも、会社としてはルールを整備する必要があります。
社員さんが会社を退職される時に、会社に重要なデータがあるのにすべて削除してしまうことがあります。
よく聞くのが、会社を退職された社員さんが使っていたパソコンのデータを容赦なくすべて削除してしまったため、会社の重要なデータまですべて消えてしまったというトラブル。
社員さんが会社を退職されても、会社の重要なデータまですべて削除されないように守らなければいけません。
そのため、社員さんが会社へ入社された時から労働条件などを含めたさまざまな書類を準備しておくべきだと思います。
職務著作があるから契約書は不要?当社の場合
「職務著作」は当然あり、守られるべき権利です。
とはいえそれについて何も説明せず、契約書にも書かないのであれば会社にとって不利ではないかと思います。
経営者が「法律で決まっているから、後でもめても私は知りません」という態度でいる。
相手に契約書の内容を確認することや教えることもないというのが元々の問題なのです。
まずは、こういった元々の問題から変えていかなければいけません。
何からしなければいけないかというと、やはり就労規則でも法律で決まっていることとはいえ確認することです。
当社の場合を例に挙げてご説明したいと思います。
当社ではお客様のデザイン制作をしたりするので、社員一人ひとりに労働条件通知書以外にも「機密保持規定」を設けています。
その中で職務著作の規定についても法律どおりの内容で一緒に入れてあり、そちらも再度確認してもらい、確認書にサインをもらっています。
別に当社では機密保持規定を特段、厳しくしているわけではありません。
入社の時に一回やるだけでは足りないと思います。
人間なので忘れてしまうこともあります。
長い間勤めていれば、「会社のルールはどんなルールだったかな」と覚えてないかもしれません。
就労規則に書いてあるとはいえ、やはり分かってもらうという努力義務があります。
そのため、労働条件が変わる度に契約書を書き直し、再度機密保持の話をする。
契約の書類も見せて、「これでOKですね」という形で了承をもう一回取ります。
労働条件が変わる度に契約書の確認をやっておかなければ、やはり信頼関係を築きにくいです。
逆に一歩踏み込んで職務著作について話し合っているからこそ、後でもめないということがあるのではないかと思います。
最後に
「リアルマーケティングマスタースクール」では、地元で頑張る中小企業のために色々と問題解決を提供しております。
無料のオンライン相談も始めていますし、こういった従業員さんとのトラブル防止のためのお話。
職務著作のお話というのは、普通であれば話題に出ることはないと思います。
こういったお話もWebサイトに掲載しております。
またご参考にしていただければ幸いです。
今回はこれで以上としたいと思います。
「著作権は社員のもので対価が必要? 契約書に書いておきたい職務著作の実際。」の動画版はこちら。