「うちのお客さんは、安いのしか買いませんよ」
畳屋さんとお話ししていると、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。チラシを撒けば「◯畳いくら」で問い合わせが来る。見積りを出せば他店と並べられる。いい表を勧めても、最後は値段で決まる。そういう毎日を何年も送っていたら、そう思うのが当たり前ですよね。
そのとおりです。価格で呼んだお客様は、価格で決めます。
ただ、それが本当にお客様の側の事情なのか、それとも店の側の事情なのか。今日はそこを、実際に数えた数字でお話しします。僕は畳を縫えませんし、産地のことも現場の皆さんにはかないません。数字を並べて眺めるくらいしか、できることがないんです。
先日、畳屋さんが集まった部屋で仕入れの中身を書いてもらったら、国産の中〜高級ランクが6割以上という店が21人中9人、2〜3割しかないという店が4人いました。同じ商売で、ここまで割れたんです。
同じ部屋の21人で、仕入れの中身がここまで分かれました
その場で書いてもらった24人分のアンケート
2026年8月7日、熊本地震のい草被害を支援するチャリティーセミナーを開きました。その日、会場でアンケートを配って、その場で書いてもらったんです。持ち帰って郵送してください、ではありません。書いて、その場で回収して、休憩中に集計して、後半のスクリーンに映しました。
回答は24人。このうち畳表を仕入れない異業種の方が3人いらっしゃったので、仕入れの話は21人で数えています。
なぜその場で集計したかというと、その日に話す内容を決めるためです。皆さんがどこで詰まっているのか分からないまま、用意してきた話をしても仕方がないですからね。
6割以上が9人、2〜3割が4人
国産の中〜高級ランクが、仕入れ全体の何割を占めているか。21人の答えはこうでした。
- 6割以上 … 9人
- 4〜5割 … 7人
- 2〜3割 … 4人
- 把握していない … 1人
同じ日に、同じ部屋にいた21人です。扱っている商品はほとんど同じ。仕入れ先だって、その気になれば同じところから引けます。それでこれだけ割れるんですよ。
そしてこの21人は、もともと二つのグループに分かれていました。毎月うちで一緒に取り組んでいる方たちと、その日はじめてお会いした方たちです。仕入れの集計では、前者が11人、後者が10人になります。
6割以上と答えた割合を、この二つで比べてみます。一緒に取り組んでいる側は11人中7人で64%。はじめてお会いした側は10人中2人で20%。そして「2〜3割しかない」と答えた4人は、全員が後者でした。前者にはゼロです。

ブログの本数も、同じ線で分かれていた
ここからが、その場でいちばん驚いたところです。同じアンケートで、自社サイトのブログを何本書いているかも聞いていました。
一緒に取り組んでいる14人のうち、300本を超えている方が5人。はじめてお会いした10人には、300本を超えている方は一人もいませんでした。逆に、ブログそのものが無いという方が3人いらっしゃいます。1本から49本までで止まっている方は、前者が3人に対して後者が5人でした。
つまり、畳表のランクとブログの本数が、同じ線で分かれたんです。その場で僕が思わず口にしたのは、こういう言葉でした。
やっぱりデジタル発信なんですね。
なぜ発信の量と、売れる畳表のランクが一緒に動くのか
チラシは価格で呼ぶ。記事は中身で呼ぶ
じゃあ、なんで発信の量と単価が一緒に動くのかって話ですよね?
呼び方が違うからです。折込チラシに何を書くか、思い出してみてください。どうしても「◯畳 いくら」が主役になりますよね。紙の面積にも限りがありますし、一瞬で目を留めてもらうには数字がいちばん強いですから。そうやって価格で呼んだお客様は、価格で決めます。これはチラシが悪いのではなくて、呼んだとおりのお客様が来ているだけなんです。
記事は違います。産地はどこか。誰が刈った表なのか。何本織り込んであるのか。どう使えば何年もつのか。そういうことを書いた記事を読んで問い合わせてきた方は、最初から中身の話をしにきています。値段の話から始まらないんですよね。
言い換えれば、集客の入口が、そのまま商談の入口になっているということです。入口で何を見せたかによって、玄関先で始まる会話が変わってしまうんですよ。
じっさい同じアンケートで、ホームページを続けていて手応えがあると答えたのは、一緒に取り組んでいる14人のうち12人。はじめてお会いした10人では4人でした。持っているかどうかではなくて、手応えがあるかどうかで差がついています。
どちらが先かは、この21人からは決まりません
ここは正直に書いておきます。
発信をしたから高い畳表が売れるようになったのか。それとも、高い畳表が売れている店だから発信に手が回るのか。21人のアンケートからは、どちらが先かまでは決まりません。数字が言っているのは「二つが一緒に動いている」というところまでです。
ただ、順番については僕の中で答えが出ています。実際に順番どおりやった店で、何が起きたかを見てきたからです。
単価が上がると、増えるのは売上ではなく時間です
主力の20表が2〜3万円から4〜5万円近くへ
一緒に取り組んでいる畳店さんの話をします。
もともとは折込チラシ一本でした。チラシは当たる年と当たらない年の振れ幅が激しくて、そのたびに一喜一憂することになります。売上が読めないので、来年の計画も立ちません。
そこから順番に手を足していきました。ダイレクトメールを出す。ニュースレターを出す。イベントをやる。商談のやり方を変える。そして最後に商品構成を変える。一気にやったわけではなくて、一つずつです。
結果として、主力だった20表が2〜3万円だったところ、いまは4〜5万円近くまで来ています。
そうなんです。出荷する枚数は変わっていないのに、売上のほうが変わったんですよ。
出荷枚数は増やさなくていい
ここは間違えてほしくないところです。うちでは参加者に、原則として出荷枚数を伸ばさない方針をお願いしています。枚数を増やしたがる方には、むしろ減らす努力をしてもらっているくらいです。
枚数を追いかけると、必ず人を増やす話になりますよね。そうすると、増えた売上は人件費に消えていきます。忙しくなった実感だけが残って、手元のお金は増えていない。この状態で走り続けている会社を、僕は何社も見てきました。
単価を上げるやり方なら、そこを通らずに済みます。出荷枚数が同じでも、売上は簡単に倍になってしまうんです。
待ってくれるお客様に変わる
そして単価が上がることの本当の効果は、お金ではありません。時間です。
1軒あたりの出荷に追われなくなるので、1軒にかけられる時間が長くなります。そして、待ってくれるお客様に変わるんです。急かされなくなるので、じっくり仕事に取り組める。仕事のクオリティが上がる。上がったクオリティが、また次の単価を支えてくれます。
最初の話に戻ります。「うちのお客さんは安いのしか買いません」。あの日、6割以上と答えた9人も、2〜3割と答えた4人も、同じ日本の畳表を仕入れられる立場にいました。違っていたのは仕入れ先ではなくて、自分の店のことをどれだけ外に書いてきたか、そこでした。
21人の数字が言えるのは、そこまでです。でもそこまでは、はっきり言っています。まずは自分の店のブログが何本あるか、数えるところから始めてみてください。
