「今度はもっといいDMを作ろう」
前に出したダイレクトメールの反応が悪かった。だから写真を撮り直して、文面を書き直して、特典も考え直す。そうやって原稿とにらめっこしているうちに、次の案内の時期が来てしまう。
その気持ち、よくわかります。僕も同じことを何年か繰り返しました。
反応が落ちたとき、僕は文面から見ません。見る順番が決まっているんです。その順番で申し上げると、反応が出ない理由は3つあります。文面が悪い、はそのうちの1つでしかないんです。
今回は、ダイレクトメールの反応が落ちたときに、どこから点検するかというお話です。
反応が出ない理由は3つあります
先に前提を揃えさせてください。
ここでお話しするダイレクトメールは、見ず知らずの方に送る新規開拓のDMではありません。一度うちで買い物なり工事なりをしてくださった、お付き合いのあるお客様に送る案内のことです。新規開拓のDMと既存のお客様への案内は、当たる理由も外れる理由も別物なので、混ぜるとどこを直せばいいのか分からなくなります。
この話のもとになったのは、問題解決ワークで受けたある事業者からのご相談です。一人で現場を回していて、事務の方に無理も頼めない。その規模の方から、売上を上げるにはどうしたらいいかというご相談でした。
そこでお伝えした話の中に、ダイレクトメールの反応が悪いパターンの整理があります。3つです。
- タイミングを外している
- 内容が悪い
- お客様に嫌われている
そうなんです。そして、みんな2つ目にしか気づかないんです。
タイミングを外している
いちばん多いのがこれです。
たとえばお盆のセールの案内です。写真を撮って、原稿を書いて、印刷に出して、宛名を出して、発送する。ここまでに何日かかるかを数えないまま、お盆が見えてきてから動き出す。出来上がって届く頃には、お盆はもう終わっています。
これ、けっこうやってるんですよね。お盆やお正月のように日付が決まっているものは、誰でも分かります。それでも間に合わないんです。分かっていないのではなく、作り始める時点がいつも遅いだけなんですね。
そしてもう一つ、外し方があります。よその店が出したDMが当たったらしい。それを聞いて、うちも同じものを出そう、と考える。
その真似が届くのは、早くても次の回、たいていは次の次です。出す頃には、当たっていた時期が過ぎています。中身は同じでも、届く時期が違えば別のDMなんです。
反応が出なかったとき、僕たちは原稿の中身を疑います。でも、その回のDMが外れた理由が「1か月遅かった」なのだとしたら、原稿を直しても次も外れます。外れた原稿を直して、また遅れて出す。これを何年も続けている方が、本当に多いんですよね。
内容が悪い
2つ目が、DMそのものの中身です。
文面が伝わらない。写真が古い。特典に魅力がない。何をしてくれる店なのかが読み取れない。
これは、はっきり原因になります。否定するつもりは全くありません。実際、中身を直したら反応が戻った例はいくらでもあります。
ただ、3つのうちの1つです。3分の1の話に、直す時間の全部を注いでいる。そのことに気づいてほしいんです。
お客様に嫌われている
3つ目がこれです。
あそこはもういいわ、と思われている。
書いていて気が重い話なんですが、これは本当にあります。そして、これがいちばん見えないんですね。
嫌われたお客様は、文句を言ってくれません。黙って次から呼ばなくなるだけです。こちらに届くのは、苦情ではなく無反応です。
そして、この3つ目を担っているのが、商品とサービスのクオリティです。案内の文面をいくら磨いても、ここは1ミリも動きません。
3つとも、返ってくるのは同じ無反応です
厄介なのは、原因が3つあるのに、こちらに返ってくる形が1種類しかないことです。
タイミングを外したDMは、返事が来ません。中身の悪いDMも、返事が来ません。嫌われている相手に送ったDMも、返事が来ません。
3つとも、郵便受けから何も返ってこないという同じ結果になります。熱が出た、としか分からないのに、風邪なのか寝不足なのか食あたりなのかを当てにいくようなものなんですね。
ですから、まず原因が3つあると知っておく必要があります。知らないままだと、いちばん思い当たりやすいものを原因だと決めてしまいますから。自分が手間をかけて作ったものですし、真っ先に思い当たるのは中身なんですね。
ただ、話はそれで終わりません。3つあると知ったあとでも、やっぱり2つ目だけを直してしまう方が多いんです。
なぜ2つ目しか疑われないのか
3つあると申し上げると、たいていの方は、なるほどとおっしゃいます。
ところが次のDMを作るときには、また文面の話に戻っている。写真を差し替えて、キャッチコピーをひねって、特典を足している。ご本人に手を抜くつもりは全くありません。
ではなぜ、毎回そこへ戻ってしまうのか。理由が3つとも別々にあります。
手を入れられるのが内容だけだから
いちばん単純な理由がこれです。

タイミングは、過ぎてしまったものを戻せません。商品のクオリティは、今夜考えて明日変わるものではありません。文面は、今夜のうちに書き直せます。
つまり、3つのうち今すぐ着手できるのが1つしかないんです。だから手が伸びる。本人は原因を選んでいるつもりですが、実際は着手できるものを選んでいるだけなんですね。
これ、ダイレクトメールでも折込でもホームページでも構造的に同じことが起きてるんですね。反応が落ちたときに真っ先に触るのは、いつも作り直せる場所です。チラシならデザイン、ホームページならトップの見出し。触れるところを触って、触れないところは検討の対象にすら入らない。
そうやって、いちばん効く場所が毎回置き去りになります。
よその店が当たったから真似する、の落とし穴
さっきの「よその店が当たったから」の話を、もう少し分解させてください。
真似をするとき、僕たちが見比べているのは、向こうのDMとうちのDMの中身です。写真の見せ方、特典の付け方、文章の長さ。そこは熱心に見ます。
見比べていないものが2つあります。届いた時期と、届いた相手です。
向こうのDMが当たったのは、中身が良かったからだけとは限りません。出した時期が、その商売の動く時期に合っていたのかもしれない。向こうのお客様が、その店を気に入っていたのかもしれない。
つまり、勝った理由が3つのうちのどれだったのか分からないまま、中身だけを持ってきているわけです。中身は向こうのもの、時期は自分の都合、相手は自分の名簿。これでは、当たった条件をひとつも再現できていません。
真似をするなら、中身より先に真似すべきものがあります。向こうがいつ出したのか、です。何月に投函されたものかを聞くほうが、キャッチコピーを写すよりよほど役に立ちます。
嫌われを担っているのは商品クオリティ
3つ目が見落とされる理由は、少し性質が違います。
これね、多分ご本人も気づいていないんですが、直す場所を根本的に間違えています。断言できます。
嫌われているかどうかは、自分では見えません。自分の仕事は、自分にとっては当たり前の水準ですから。そして、お客様は面と向かって言ってくれません。
だから、嫌われを疑うという発想そのものが出てこないんです。気づけないと不幸なことになっちゃいますよね。本人は毎回まじめに原稿を直していて、それでも数字が戻らないわけですから。
綺麗事でもなんでもなく、ダイレクトメール対策として商品のクオリティを上げなければいけません。文面の話ではなく、仕事の中身の話です。
具体的には、こういうところです。
- 約束した日に、約束したとおり伺えているか
- 作業のあと、お客様のお宅を汚していないか
- 仕上がりが雑になっていないか
- 注文書や契約書の書類がきちんとそろっているか
- 金額の根拠を、お客様に説明できているか
どの商売にも、同じ形の急所があるはずです。そして僕が見てきた範囲で言うと、みんなが思っているより、この水準は下がっています。
言い換えると、DMの反応というのは、送る前にもう半分決まっているんです。封筒を開けた瞬間、お客様はうちの前回の仕事を思い出します。思い出したものが良ければ読みますし、悪ければ読まずに捨てます。
原稿の出来で戦えるのは、思い出してもらったあとの話なんですね。
先にクオリティ、次にリスト
じゃあ、具体的に何から手をつけるのかって話ですよね?
ある事業者にお伝えした順番は、こうです。
- 価格設定を見直す
- 商品とサービスのクオリティを上げる
- お付き合いのあるお客様に案内を送る
ダイレクトメールは3番目です。1番目と2番目を飛ばして3番目から始めた方が、原稿の前で悩むことになります。
後回しにすると、忙しくなってから全部クレームで返ってきます
なぜクオリティが先なのか。理由は、あとに回すと取り返しがつかなくなるからです。
考えてみてください。クオリティを上げないままDMを打って、運よく当たったとします。仕事が増えます。
増えた仕事は、上げていない水準のまま納めることになります。日にちの約束も、仕上がりも、書類も、忙しいぶんだけ雑になります。そうすると、増えた仕事の分だけクレームが増える。しかも、いちばん忙しい時期にまとめて返ってきます。
当たったのに、なんでこんなにしんどいんだろう。そう思ったときには、もう手が空いていません。手が空いていないから直せないし、直せないからまた次のクレームが来る。
僕はこれで潰れかけた方を何人も見てきました。ってことで、順番だけは変えないでください、と申し上げています。先に上げておけば、増えた仕事はそのまま次のお付き合いになります。同じ「DMが当たる」でも、行き先が正反対なんです。
名簿は3000を目標にします
クオリティのめどが立ったら、次は送り先です。
目標は3000。このぐらいあると、反応が安定してきます。
なぜ数が要るのかというと、少ない名簿は当たり外れの振れ幅が大きいからです。たまたま反応が良かった回と、たまたま何も返ってこなかった回が出ます。振れているだけなのに、良かった回のDMを「当たった原稿」だと思い込んで、次も同じものを出してしまう。そうやって、判断のほうまで狂っていきます。
3000あると、その揺れがならされます。出したときの手応えと結果がつながるので、次に何を変えればいいのかが読めるようになるわけです。
とはいえ、明日3000にしてくださいという話ではないんです。まずは今、何件あるのかを数えるところからです。
数えてみると、たいていは思っていたより少ないですし、住所が古いままのものも出てきます。名簿は一晩では増えません。増えないからこそ、いちばん先に手をつける値打ちがあるんですね。
案内はお付き合いのあるお客様から
そして送り先ですが、新規のお客様はまだ要りません。
一度うちに仕事を頼んでくださった方に案内を送る。それだけで、一人規模の商売なら十分に届きます。
理由は2つあります。
一つは、その方たちがうちの仕事を実際に見ているからです。クオリティを上げた効果がいちばん早く出るのが、この方たちなんです。そして、下げたときにいちばん早く離れていくのも、この方たちです。
もう一つは、体力の問題です。売上を2倍にしようと思えば、新規集客をやらなければいけません。そこまでやると、一人では仕事が回らなくなります。回らなくなれば、また商品のクオリティが落ちて、振り出しに戻ります。
粗利を3割増やす。お付き合いのあるお客様への案内で狙うのは、そのぐらいがちょうどいいと思います。地味に聞こえますよね。でも、この3割は取ったあとも仕事が回るので、来年も再来年も残るんです。
ですから、次のダイレクトメールで反応が落ちていたら、原稿を開く前に3つ思い出してください。出す時期は合っているか。中身はどうか。そして、前回の仕事は喜んでもらえたか。
3つ目に正直に答えられたなら、次のDMは書き直さなくても届きます。
