「うちの社員、面談で見当違いのことばかり言うんです」その認識で合っています。ただ、ずれているのは社員の側の問題ではありません。面談という場の構造上、そうなるようにできているんです。
僕は長いこと、傾聴のやり方で面談を教えてきました。相手の話をよく聞きましょう、という例のやつです。5年以上やってきて、はっきり分かったことがあります。あれ、多くの人には習得が難しいんですよね。
そもそも、社長面談の相手は必ずずれている

面談を設定する場面を思い出してください。社長が「この社員と1対1で話したい」と思うのは、どういうときでしょうか。
うまくいっている人とは面談しない
うまくいっている社員とは、面談しないんです。だって「うまくいってるよね」で終わってしまいますから。わざわざ時間を取る必要がない。
面談を組むのは、うまくいっていない社員です。遅れている、動いていない、こちらの意図が伝わっていない。そういう相手だからこそ、席を用意します。
だから席についた時点で課題はずれている
ここが構造です。うまくいっていない人と面談するのだから、その人が認識している課題は、たいていこちらの見立てとずれています。
ずれているから面談が必要で、面談が必要な相手は必ずずれている。順番が逆なんですね。社員の質の問題ではなく、選び方の問題なんです。
そうなんです。ずれていない社員は、そもそも面談の席に座っていません。
ずれを正そうとすると綱引きになる
ここで多くの社長がやるのが、ずれの修正です。「いや、そこじゃなくて」「問題はこっちなんだ」と、認識を合わせにいく。
気持ちは分かります。僕も長いことそうしていました。でも相手の言い分を聞いているうちに、こちらの言いたいこととずれていく。そして我慢できなくなって、こちらが喋り始めるんです。
こうなると、もう面談ではありません。圧力の綱引きです。どちらが押し切るかの勝負になって、社長が勝ちます。社長が勝った面談の後、社員が自分から動くことはありません。
なぜ説得ではひっくり返らないのか
綱引きになる理由を、もう少し分解します。
言い分を聞くだけでは食い違いが埋まらない
傾聴そのものが悪いわけではありません。相手の話を聞くのは、今回のやり方でも重要です。
ただ、聞いているだけだと、食い違いはそのまま残るんですよね。相手が話す内容と、こちらが持っていきたい方向が違う。その状態で最後まで聞き切っても、結論は変わりません。
我慢できずにこちらが喋ってしまう
だから途中で我慢できなくなります。これ、教えている僕が言うのもなんですが、本当に多いんです。最後の方でいっぱい喋ってしまう。
聞く技術が足りないというより、聞くだけでは前に進まない場面に、聞く技術で対処しようとしているからなんですね。
目標を決めるのは相手であって社長ではない
やり方を変えました。問題点の把握はします。ここは食い違っていることが多いので、まず何が問題かを掴む。
そのうえで、目標設定は相手にさせます。動機づけを促して、具体的な行動まで本人に決めてもらう。あくまで相手が主体です。
こちらからの説明も説得も、一切やりません。自社の方針の素晴らしさを語る必要もないです。説明しないほうが、結果として動くんです。
言い訳の中のプラスを3つ拾う
じゃあ、具体的に何をするのかって話ですよね。やることは1つです。
人は言い逃れの中でもプラスを口走る
社員が言い訳をしているとき、その言葉をよく聞いてください。完全な否定だけで話す人は、まずいません。
「僕これ絶対やりたくないんですけどね」この後に、たいてい続きがあります。「いや、やらなきゃいけないのは分かってるんですよ」
これです。言い逃れをしながら、人はプラスのことをついつい口走るんです。そこさえ見逃さなければ大丈夫です。
3つ拾って、そのまま言い返す
肯定的な部分を3つ拾います。そして相手に返します。
あなた、こう言いましたよね。こうも言いましたよね。これも言いましたよね。
自分が言った肯定的な言葉を3つ並べられると、相手の認識が変わります。こちらが説得したわけではありません。本人の言葉を集めて見せただけです。
講座では「これでひっくり返せなかった人はいない」と話しています。3つで足ります。4つ目を探す必要もありません。
逃げたいだけ逃がしてよい
大事なのは、慌てないことです。相手が言い訳を続けても、ゴールに引きずり込もうとしない。逃げたいだけ逃がしてあげてください。
逃げている間も、プラスの言葉は出てきます。むしろ言い訳が長いほど、材料は増えます。
うまく言わせようと頑張ると、かえって効きません。ずっと後ろ向きなことを言われても、余裕を持ってください。そうやって頑張っているんだね、くらいの気持ちでいるといいです。
それでもずれ続けたら、入り口まで戻る
3つ拾おうとしても、まったく噛み合わないことはあります。全然違う話をずっとしている。
その場合は、面談の入り口まで戻ってください。何の話をする時間なのかを、もう一度置き直すんです。そこがずれていたなら、拾えないのは当然なんですね。
社員の課題がずれているのを、正す必要はありません。ずれた話の中から、本人が言ったプラスを3つ持ってくる。それだけで、面談の終わり方が変わります。
