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売ってるのはスイングですか、それともスコアですか。

教える商売はスキルでなく成果を売る ― 100回構う方が、10回の名指導より上達する

問題解決ワークで、ゴルフのオンラインレッスンを始めるプロ資格を持ったコーチから、設計の相談がありました。僕がその場で最初に言ったのが「振ること教えても、スコア上がらないですよ」です。教わる側として散々遠回りしてきた人間から見た、教える商売の組み立て方をお話しします。

スイングではなく、手元の記録を一緒に見ているコーチと生徒を描いたイラスト

「教える技術には自信があるんです。」「なのに、続けてもらえないんですよ。」

よく分かります。今回はゴルフのオンラインレッスンをどう設計するか、という相談に答えた回のお話です。

先に言っておくと、僕はゴルフに全く向いてません。50前の手習いというだけでもハンデなのに、若い頃スポーツマンでもなんでもないですし、手先は不器用。50球も打てばヘトヘトです。無理にドライバーを振って肋骨を折ったこともありますし、老眼でボールがどこに飛んだのかハッキリ見えてません。偉そうにゴルフを語る資格なんて、モチロンこれっぽっちもありません。

ただ、教わる側として散々遠回りをしてきました。月1〜2ラウンドで、一年そこそこで136から89まで、47もスコアを縮めました。ただ、そこに至るまでが無駄だらけでした。で、その無駄が、そのまま教える商売の設計図になるんですよね。

振ること教えても、スコアは上がらない

その場で僕が最初に言ったのがこれです。

振ること教えても、スコア上がらないですよ。振ることとスコアは違うんで。120キロのストレートでも三振取れるじゃないっすか

コーチの教え方は正しい。その正しさが間違いの元

誤解のないように先にお伝えしますが、上達にコーチは必ず必要です。コーチと付き合いゼロでスコアが良い人は、相当スポーツに向いてる人。つまり例外パターンです。

でも、何年通ってもスコアが上がらない人、いますよね?これ、経営でも同じなんですよ。コンサルの先生に5年ついて、契約前と業績が変わってないという社長さん、たまにいます。構造的に同じことが起きてます。

まず良くない話なんですが、そもそも相手を成功させないコンサルやコーチも実際います。なぜかというと、クライアントが一人で次のステージに上がって、自分との契約を切られるのが嫌だから。嘘みたいですけど、大手さんは大体そんな感じです。これはめちゃくちゃかわいそうなパターンですよね。見抜けないと不幸なことになっちゃいます。

ただ、今回お話ししたいのはそっちじゃありません。コーチも懸命で、レッスンにも手応えがあって、それでもスコアが上がらないパターンです。これ、たぶんコーチ本人も気づいてないんですが、教え方を根本的に間違っています。断言できます。

教え方は正しい。その正しさが間違いの元なんです。

ドライバーを270ヤード飛ばせる肉体を持った人が、72を出すために血の滲むような努力をした経験。それをお腹の出たオッサンにどれだけ伝えても、全く参考になりません。話のレイヤーが違います。

なんでこうなるかというと、上手い人は向いてない人の苦労を知らないからです。彼らは中学生までに90なんて切っちゃってるので、想像でアドバイスすることになる。歌が上手い人に、音痴の気持ちは一生わかりません。リズム感のいい人は、リズム感の悪い人のダンスを笑うことはできても、共感できないから手の施しようがありません。

そんなわけで僕は、体全体を使ったスイングとか、ドローボールで飛ばそうとか、そういう「正しい」ことを教わり続けました。向いてない人間には金輪際いらないやつです。それをやられちゃうと、逆に上達から遠ざかるんですよね。

正論に値段はつきません

で、これが商売の話にそのまま跳ね返ってきます。

体全体を使って振りましょう。ハンドファーストで。掌屈を意識して。こういう正論は、無料の動画にいくらでも転がっています。同じものを有料で出しても、一円にもなりません。中身が悪いからじゃなくて、同じものがタダで手に入るからです。

じゃあ何を売るのかって話ですよね?スコアです。言い換えると、その人がどこまで行けるかという道のりを売ります。

「100切り」を目標にしてはいけない

道のりを売ると決めたら、じゃあどこをゴールに置くのかって話ですよね?

願望と目標がごっちゃになってませんか

ここを間違えると、あとの設計が全部ズレます。教える順番も、料金も、何回で卒業してもらうのかも、全部ゴールから逆算するものですから。

僕はここで一年近く無駄にしました。漠然と100を切りたいな、と思ってました。それなら周りに迷惑をかけないし、恥もかかないだろう、と。

で、練習して、切れなくて、「1年目でなんとかなるわけないよ、3年頑張ろう」とか慰められる。慰められるほど惨めな気持ちになるばかりでした。クラブを思いっきり振り回して、飛んだ距離が1mだった日は、本当にゴルフをやめようと思ったものです。

これではいけない、ってことで立ち止まって考えました。そこで気づいたんですが、100切りって、そもそも適切な目標じゃないんですよ。

ゴルフはボギーペースで90、ダブルボギーペースで108。だから99は単なる通過点なんです。売上でいうと8000万円とか4億とか、中途半端な数字を設定してしまうようなものです。そういう数字で走り出すと、論理的な最適解がブレます。ここは案外大事で、多くの経営者が間違ってるところでもあります。

ってことで目標を90に置き直しました。そこから逆算したら、必要なことがすんなり決まりました。経営と同じ原則ですね。

で、生徒さんも僕と同じように辞めていきます。辞めるとき本人は「自分には向いてない」と言うんですが、向いてないんじゃなくて、行き先が決まってなかっただけなんですよ。

レッスンの設計では、逆に刻みます

ただ、教える側の設計としては話が少し変わります。

この相談で出てきたのは、110の人には99、というようにスコア帯ごとに道のりを刻む設計でした。さっきの「99は通過点」と矛盾するように見えますよね。矛盾しません。ゴールを90に置くのは上達の理屈、110の人に99を見せるのは続けてもらうための刻みです。役割が違います。

そのうえで、取り組む順番まで決めてしまいます。

  • 最初はハーフショットで、きちんと当たることの確認
  • 次にユーティリティ
  • ドライバーを入れるのは8月から

「ドライバー入れるのは8月になってからですよ」って言えばいい。順番が決まっていると、説得しなくてよくなります。「ダメです」ではなく「8月です」なので、受け取られ方が全く違います。

毎月の面談で現在地を確認しながら道のりを進む伴走の流れを表したイラスト

上達させるのは名指導ではなく、構う回数です

今回いちばんお伝えしたかったのはここです。そして、たぶん教える側がいちばん認めたくないところでもあります。

100回来た人と、10回でふてくされた人

1回ごとのレッスンの出来を、磨きにいってませんか?たぶん、そこは磨かなくていいです。

年間100回のレッスンというのは、その場で結果を出す対面レッスンとはレイヤーが違います。100回来れば、黙って振らせていても上達します。逆に10回でふてくされたら、どんな名指導をしても上達しません。

そうなんです。指導の質より、来続けてもらえるかどうかが先なんですよ。

だから僕はその場で「構って構って100回やらせる方が上達します」「愛される努力をしてください」と言いました。指導力を上げる努力ではなく、愛される努力です。

技術者の方ほど、この話は嫌でしょうね。腕で評価されたいですから。気持ちはわかります。いや、僕もわかってます。

ただ、腕で評価してもらうには、まず来続けてもらう必要があります。順番の問題です。

上手いスイングを見せるほど、離れていきます

せっかくのきれいなスイングは、封印するくらいでいいと思います。見せられた側は「自分には無理だ」と思うだけなんで。

(僕もコーチのお手本を見て、何度も心が折れました。善意でやってくれてるので、なおさら言い出せないんですよね。)

停滞する時期は、先に言っておいてください

これがいちばん効くと思います。

人が辞めるのは、伸びなくなったときです。そして「自分には向いてない」と思って離れていく。さっきの僕と同じですね。

でも「ここで一度停滞します」と先に予告されていれば、止まったときに「ああ、これか」で済みます。同じ現象なのに、辞める理由から予定通りの通過点に変わる。これは指導技術じゃなくて、設計です。

そして毎月のセッションで、現在地と伸びを一緒に確認します。成果が出ている実感って、放っておいたら本人には見えないんですよね。見せる場を、こちらで用意してあげる。それだけで「払ったかいがあった」が積み上がります。

料金は1回券を基本にしてください。まとめ売りは、先方が強く望むときだけ。1回ずつ買ってもらう方が、長い目で見るとリピートが増えます。

動画と顧客リストだけは、自分の手元に

それともう一つ、事業として大事な話をしておきます。集客用の配信動画と顧客リストは、必ず自社で管理してください。

なんでこの2つだけ、そんなにしつこく言うのか?

レッスンの中身は頭の中にあるので、誰にも取られません。逆に生徒さんとの関係は人と人なので、こちらの都合では守りようがない。自分で作れて、自分の手元に置けて、しかも人がいなくなった後まで残るのは、この2つだけです。

これ、失ってから気づくものなんですよね。だからしつこく言います。手元に残っていれば、何かあっても明日また同じ商売を始められます。なければ、集客からやり直しです。

ここまでゴルフの話で書いてきましたが、教える商売なら全部そのまま置き換わります。あなたが売っているのは技術ですか、それともお客さんがどこまで行けるかですか。

技術を売っていると、毎回いいレッスンをしないといけません。相手が疲れてる日も、こちらの調子が悪い日も、気を張り続けることになる。腕のいい人ほど、これで先に疲れてしまいます。

道のりを売っていれば、今月やることは道のりの側が決めてくれます。こちらは構って、現在地を見せるだけでいい。明確な目標があれば、明確な対処法は存在するはずなんですよ。ぜひ参考にされてください。