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3年前、僕はこの話を「滅びる準備をしてください」で終えていました

減っていく業界にいる人が、いちばん得をする数え方

同業が10年で半分以上減った、という話は聞き飽きていると思います。ただ、減った数をそのまま競合の数だと思うと、数え方を間違えます。残った側の年齢構成を国勢調査で見ると、新しいことをやらない方が半分近くいます。半分に減って、その半分近くが動かない。だから、いま実際に競合している相手は昔の5分の1ぐらいだ、という話をします。

シャッターの閉じた工房が並ぶ通りで、一軒だけ明かりが灯っているイラスト

3年前、僕は同じ話を「みなさん、滅びる準備をしてください」で締めていました。2023年5月13日、岡山でのセミナーです。演題は「生き残りの時代に 親父が死んだらあなたが社長!?」でした。

今回は、同じ統計を出しながら、着地を変えています。同業が減っていく商圏で、いま実際に競合している相手を数え直すと、案外希望がある。そういう話です。

先に白状しておくと、統計そのものは3年前と何も変わっていません。変わったのは僕の言い方だけです。数字に強くなったわけでも、新しい資料を見つけたわけでもありません。同じ数字を、別の順番で見ただけです。

「滅びる準備をしてください」と言って、僕は話を終えていました

岡山で出したスライドは、畳は滅びない、しかしあなたの仕事は早晩滅びる、でした

岡山で出したスライドには、こう書いてありました。

「畳は滅びない。
しかしあなたの仕事は
早晩滅びる。」

根拠にしたのは、畳店の件数の推移です。1975年に20,410軒。1995年に16,260軒。2015年に6,700軒。2025年で2,905軒。このカーブをそのまま延ばすと、2035年に1,314軒、2045年に520軒、2055年に180軒、2065年に55軒になります。

日本の自治体は1,741あります。2035年の1,314軒というのは、1市町村に1軒を下回るということです。2065年の55軒は、都道府県に1軒ちょっと。だから岡山では「2065年には都道府県に1件になります」と言いました。

で、当時の締めがこれです。そのままの言葉だと「全員滅んだらいい。滅びる準備してね」でした。ひどい言い方ですよね。統計は正しかったんですが、聞いた方に残るのは統計の正しさだけで、明日どう動くかはそこに入っていませんでした。

言い方を変えたら、会場から「同じことか」と返ってきました

今年の8月、熊本地震のチャリティーセミナーで、この予測をもう一度出しました。今度は、参加された方の県に当てはめながらです。

10年前の写真や名簿の話にもなりました。「あったんですよ。10年前あったんですよ。みんな若かったっすよ」それが10年で半分以下になっています。あと10年で、また半分以下になります。

そこで僕は、3年前より少し大人になったつもりで、こう言い直しました。「畳は滅びないですよ。そのものは滅びないんです。君らが滅びるよってだけなんです」

会場から即座に「同じことか」と返ってきました。同じことですね、と僕も認めました。言い方を丸くしても、中身が同じなら、来てる人もがっかりですよね。

ここまでが、僕の失敗です。統計を見せて、滅びますと言って、終わる。3年前も今年も、そこまでは同じでした。違ったのはこの先で、今年は数え方の話を足しました。

減ったのは半分。動いているのは、そのまた一部です

ふすま屋の欄は、国勢調査からもう消えました

国勢調査には、職業を答える欄があります。畳職の欄は、まだあります。ふすま職の欄は、もうありません。

会場ではこう言いました。「ふすま職人って、欄が亡くなったんですよ。で、もうすぐ僕らも亡くなるんですよ」

畳職と答えた人は、直近の調査で9,130人。1万人を切っています。このままだと回答のメニューから消えて、「建設業その他」と答えることになります。寂しいですけど、しょうがないんです。

ただ、ここで言いたいのは寂しい話ではありません。畳職9,130人という数字には、年齢の内訳がついているんです。そこを見ると、減った数とは別のものが見えてきます。

畳職9,130人のうち、4,040人が65歳以上です

国勢調査の年齢構成です。畳職9,130人のうち、65歳以上が4,040人。44.2%です。40歳未満は880人。9.6%しかいません。

岡山のスライドには、この数字に添え書きをしていました。「いまの65歳が80歳になったら」。15年後の話です。半分近くが、配達に行けなくなる年齢になります。

会場でもこう言いました。「ここに座ってる人も、こっちが残ってこっちが死ぬみたいな。隣の人が死ぬんですよ」セミナーに来るような意識の高い方は、それだけで生存率が高いです。だから自分の周りを見ても実感が湧きません。10年前に一緒に飲んでいた同業の顔を、思い出してみてください。半分以上、消えているはずです。ゆっくり消えるので、周りを見ていないと気づかないだけなんです。

建設業全体と並べると、この業界の傾きが見えます

畳だけが特別に高齢化しているのか、という疑問が出ると思います。建設業全体の数字と並べてみます。国土交通白書の令和7年版によると、建設業で55歳以上は36.7%。全産業では32.4%です。29歳以下は建設業で11.7%、全産業で16.9%。

建設業も高齢化していると言われる業界です。それでも55歳以上で36.7%。畳職は、65歳以上だけで44.2%です。区切りの年齢が10歳上なのに、比率のほうが高い。この傾きが、畳という業界の現在地です。

ご自分の業界の数字も、同じ並べ方で見てみてください。国勢調査と、業界の白書。この2つを並べるだけで、残った同業のうち動ける人が何割いるか、だいたい見当がつきます。

掛け合わせると、実質5分の1になります

ここまでの数字を、商圏に落とします。

まず、同業の数が半分になりました。い草の農家も作付面積も畳表の生産も、農林水産省の「いぐさ(畳表)をめぐる事情」の数字で10年で6割減っています。畳店の件数も、2015年から2025年で半分以下です。ある年は災害で早く減り、別の年はゆっくり減る。それだけの違いで、全体で見れば綺麗なカーブになります。統計は重力なんで、逆らうことはできません。

次に、残った半分のうち、44.2%が65歳以上です。引退される側です。新しいことはやりません。

半分の、そのまた半分近くが動かない。当日の僕の言い方は、こうでした。「商圏のライバルは半分になったでしょ。それが高齢化して動いてない。じゃあ実質ライバルってもう5分の1ぐらいになってるんですよ」

きっちり割り算した数字ではありません。ただ、半分に減ったという数字だけを見て競合の数だと思うのと、その半分近くが引退される側だと知ったうえで見るのとでは、明日の動き方が変わります。

滅びる方向の統計は、ここで向きが変わります。向こうは新しいことをやらないんだから、こちらがやるだけでいい。案外そういう意味では、希望はあるんです。

説得する相手を、僕は変えました

引退される方には、もう勧めません

3年前の僕は、会場全員に向かって滅びますと言っていました。65歳以上の方も、これから何十年もやる方も、まとめてです。

今は分けています。引退される側は、それでいいんです。問題は、これから生きるかもしれない人のほうです。

たとえば65歳以上の畳店を100人集めて、この話をしたとします。誰一人やらないと思います。例外があるとしたら、お子さんが手伝ってくれるとか、事務員さんがしっかりしているとか、そういうところだけです。その条件が無いなら、無理なんです。

だから僕は、引退される方に新しいことを勧めるのをやめました。引退すると決めた方は、それでいい。責める話ではありません。その分の時間を、これから生きる側の人に使うことにしました。

僕も65歳を過ぎたら、たぶんやらないと思います

これは他人事として言っているのではありません。会場でもこう言いました。「僕も65歳過ぎて、それ新しいことできるかって、多分できないと。俺はやらないなと思う」

新しいやり方を覚えて、今まで通用していたものを捨てて、また一から積む。65歳を過ぎてそれをやる人は、珍しいと思います。僕がやらないと思うことを、人に勧めるわけにはいきません。

だからこの話は、65歳以上の方を責める話ではないんです。残った半分のうち、動かない方が半分近くいる。それは責める材料ではなく、これから生きる側の人が競合を数えるときの材料です。

向こうがやらない1つを、こちらが1つやるだけです

では、これから生きる側は何をするか。世の中が新しく変わったなら、それをやればいい。それだけです。

ある会員さんの話を、当日しました。売り上げが高いとか、ものすごく頑張っているとか、そういう話ではありません。その方の周りに、自社のブログを書き続けるような同業は、まずいない。「あの方の周りは敵はいないと思います。そういう意味では楽ですね」そう言いました。

向こうがやらないことを、こちらが1つやる。5分の1に減った競合の中で、それをやっている同業がいないなら、その1つで商圏の景色が変わります。何をやるかは商売によって違いますが、選び方は同じです。残った同業が、65歳を過ぎてもやるだろうか。やらないと思うものを、1つ選んでください。

畳は滅びません。畳そのものは、ちゃんと残ります。滅びるのは、動かないまま残っている側の仕事です。3年前の僕はそこで話を終えていましたが、今は続きがあります。その側にいないだけで、あなたの商圏の競合は、もう5分の1なんです。

ご自分の商圏で実際に競合している相手を数え直したい方は、リアルマーケティングマスタースクールの問題解決ワークやオンライン相談でご一緒しています。ご自分の業界の数字を持ってきていただければ、商圏の数え方から一緒に見直します。