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自己紹介を書こうとして、二行目で手が止まってしまう経営者の方へ。

プロフィールを生まれた順に書くのをやめると、最後まで読んでもらえます

プロフィールは、生まれた順に並べても誰も読んでくれません。やることは三つです。人生年表を書き出して、印のついた出来事を三幕の順番に並べ替えて、まず200文字だけ書く。材料を足すのではなく順番を変えるだけで、同じ話が読まれるものに変わります。

長い紙の年表を両手で広げて読む女性と、壁に貼られた三枚の無地のカードを描いたイラスト

「僕には人に語れるような経歴なんてありません」

プロフィール作成講座では、ご自分の自己紹介をその場で書いてもらう時間があります。そこで手が止まってしまう方に理由をうかがうと、たいていこう返ってきます。甲子園に出たわけでもない。地元で親のあとを継いで、真面目に続けてきただけ。そんな話を誰が読むんですか、と。

そのとおりです。劇的な経歴を持っている人なんて、そんなにいません。ただ、読まれるかどうかを決めているのは、経歴の派手さじゃないんですよね。書く順番のほうです。

今回は、僕が講座でやってもらっている手順を、そのままお話しします。やることは三つだけです。先にお断りしておくと、僕は文章の専門家ではありません。うまい文章を書く腕も全くないです。ただ、仕事の場面で求められているのもうまさではなくて、マトモそうで簡潔に伝わることのほうですから、その点はご安心ください。

まず、人生年表を書き出してもらいます

一年ずつ、思い出せることをつらつら書く

最初にやるのは、自分の人生年表を作る作業です。

いきなり自己紹介を書こうとする方が多いんですが、それだと手元にある材料しか使えません。直近の数年と、いま扱っている商品の話。だいたいこの範囲で終わります。先に材料を全部出しておかないと、あとの並べ替えができないんですね。

僕が講座でお願いしているのは、生まれた年から今年まで、一年に一行ずつ書いていくことです。上手にまとめようとしなくていいです。文章になっていなくても全然かまいません。その年に何があったかを、思い出せる範囲でつらつら書いていくだけです。

長い紙の年表を胸の前に広げ、いくつかの出来事に赤い丸をつけた男性のイラスト

これ、やってみると不思議なもので、手を動かしているうちに忘れていたことが出てくるんです。中学のときに転校した年だとか、はじめて自分で稼いだ年だとか。書き出す前は特に何もない人生だとおっしゃっていた方ほど、途中で止まらなくなります。

で、一通り並べ終わると、こういう人生だったんだな、という振り返りができます。この振り返りが、あとの作業の材料になります。

いまの仕事につながっている出来事に印をつける

書き終わったら、上から読み返してください。

そのときに、いまの自分の仕事に結びついている出来事だけ、印をつけていきます。何がきっかけでこの商売を選んだのか。どうしてこのやり方にこだわるようになったのか。なぜ、あのとき辞めずに続けたのか。

どんな出来事に印がつくのかというと、たいていは楽しかった年ではありません。お客様に怒鳴られた日。同業の仕事を見て、自分のものが安っぽく見えて情けなかった日。そういう年に丸がつきます。

思い当たる出来事に丸をつけるだけで十分です。印がひとつもつかない年が何年も続いても、気にしないでください。人生の大部分はそういう年でできていますよね。

大事なのは、全部を語ろうとしないことです。このあとプロフィールに使うのは、印のついた出来事だけになります。

ただし、この年表を人に読ませてはいけません

ここで多いのが、できあがった年表をそのまま清書して、プロフィール欄に貼ってしまう方です。

やめてください。生い立ちから順に並べたものを、誰も聞く耳を持って読んではくれません。

理由は単純です。読み手にとって、それは自分と全く関係のない他人の記録だからです。何年に生まれて、どの学校を出て、どこに勤めて。読み手は、自分に関係のあるところが出てくるまで待ってはくれません。その前に画面を閉じます。

履歴書と自己紹介は、そもそも目的が違います。履歴書は、間違いのない人かどうかを確認してもらうための書類です。プロフィールは、この人にお願いしたいと思ってもらうための文章です。確認してもらう順番と、選んでもらう順番が同じわけがないんですよね。

断言できます。年表は材料であって、作品ではありません。

ってことで、次は並べ替えの話です。

次に、印のついた出来事を三幕の順番に並べ替えます

人は感情で決めて、理屈をあとから付けます

並べ替えの手順に入る前に、なぜ順番でそこまで変わるのかをお話しします。

人は、感情で決定して理屈を後付けする生き物です。理屈のうえで有利な商品があっても、心情的にこっちが好きだからという理由で、そうでないほうを買うんですよね。何年も勝てていないチームに、それでもファンがついているのと同じです。応援したくなるという気持ちのほうが、先に動きます。

だとすると、選んでもらう側がやるべきことは、性能や実績を積み上げることだけではありません。感情の面でつながる必要があります。そのために欠かせないのが、自己開示です。

「あなたそういう人だったんだよね」

読み終わった相手にこう思ってもらえたら、その時点で仕事の話はだいぶ進んでいます。逆に、経歴と資格だけがきれいに並んだプロフィールからは、この一言が出てきません。

三幕とは、旅立ち・試練・帰還のことです

では、相手に聞いてもらえる順番とは何なのか。

実はこれ、大昔から決まっていて、神話の法則と呼ばれています。映画のシナリオを書く人が最初に習う、基本の型です。人が感動する神話の構造を、そのまま自分の人生に当てはめて使います。

構造は三幕でできています。

  • 第一幕: 離別と旅立ち
  • 第二幕: 試練と通過儀式
  • 第三幕: 帰還

最近ご覧になった映画を思い出してみてください。主人公がそれまでの居場所を離れて、ひどい目に遭って、何かを持って戻ってくる。だいたいこの形ですよね。

物語として作られたものだから、この形に当てはまるわけではありません。人間がその順番でしか話を受け取れないから、物語のほうがその形になっているんです。

12のアウトラインに自分の出来事を割り振る

三幕をもう少し細かく割ると、12の骨格になります。

  1. 不足した認識(日常生活)
  2. 認識の高まり(冒険への誘い)
  3. 変化への高まり(冒険への拒否)
  4. 克服(賢者との出会い)
  5. 取り組み(戸口の通過)
  6. 実験(試練、仲間、敵)
  7. 準備(最も危険な場所への接近)
  8. 大きな変化(最大の試練)
  9. 実績(報酬)
  10. 再取り組み(帰路)
  11. 最後の挑戦(復活)
  12. 勝利(宝を持っての帰還)

さっき印をつけた出来事を、この番号のどこかに置いていきます。

全部埋める必要はありません。空欄があるまま先に進んでください。埋めようとして、なかった話を作ってしまうほうが、よほど困ったことになります。

言葉が大げさに見えるかもしれませんが、中身は身近な話で足りるんです。賢者との出会いは、師匠でなくてかまいません。たまたま読んだ一冊の本でも、無理を言ってくれた取引先の担当者でもいいんです。最大の試練も、命がけの何かである必要はありません。資金繰りが回らなかった月でも、職人さんが一斉に辞めた年でも、それが当時のあなたにとって一番苦しかったなら、8番に入ります。

材料は同じでも、順番が変われば読まれます

ここまでの作業で、新しい経歴をひとつも足していないことに気づかれたと思います。

そうなんです。書いてあることは、最初の年表と同じです。違うのは並び順だけ。それでも、読み手の受け取り方はまるっきり変わります。

言い換えれば、これは取材ではなく編集の仕事です。足りないのは経歴ではなく、順番のほうなんですね。

もうひとつ、順番を決めると副産物があります。どこを厚く書けばいいかが、自動的に決まるんです。年表のままだと全部の年が同じ重みに見えて、どこを膨らませるか判断がつきません。三幕に置き直すと、二幕の試練が主役になりますから、そこを厚く、あとは短くと決まります。

最後に、200文字だけ書いてもらいます

2000文字は無理でも、200文字の作文なら書けます

並べ替えが終わったら、いよいよ書く作業です。

ここでいきなり長い文章を書こうとしないでください。僕が講座でお伝えしているのは、2000文字は無理でも200文字の作文なら誰でも書ける、ということです。

200文字というと、原稿用紙半分ですよね。一幕あたり数行しかありません。そのぶん、書けることは絞られます。

小さなカード一枚を掲げ、もう一方の手から長い紙の巻物を床まで垂らした女性のイラスト

それでいいんです。アウトラインに当てはめてから、あとで内容を膨らませていけば済みます。重要なのは構造のほうで、文章の量ではありません。

順番のできていない2000文字より、順番のできている200文字のほうが、ずっと仕事につながります。

書けない人は、しゃべって書き起こす

それでも書けない、という方もいらっしゃいます。

キーボードの前に座ると言葉が出てこない。これは珍しいことではなくて、講座でもよくあります。

その場合は、書くのをやめて録音してください。12の骨格を横に置いて、順番にしゃべっていく。あとから聞き直して、文字に起こします。

しゃべった言葉は、そのままでは文章になりません。なりませんが、材料としてはむしろ良質なんです。書こうとすると身構えてしまって、余計に固い言葉が出てきますから。

骨格を並べておく道具は、アウトライナーが向いています。項目を上下に入れ替えられるので、並べ替えの作業と相性がいいんですよね。使い慣れたものがなければ、紙に番号を振って付箋を貼るだけでも同じことができます。

書き上げた200文字をどこに置くか

最後に、置き場所の話をします。

プロフィールで一番大事なのは、誰に何を言うかです。書き上がったものを読み返して、これは誰に向けた文章になっているかを確認してください。自分の商品を欲しがっている方の心に届く言葉になっていれば、それで合格です。

置き場所は、SNSのプロフィール欄が最初の候補になります。投稿を見て共感してくださった方が、次に見る確率が一番高いのがプロフィールだからです。何度も売り込みの投稿を流すより、よほど無理がありませんよね。

で、そのプロフィール欄には出口を用意しておいてください。ホームページやブログのURLを、興味を引く一言を添えて置いておく。自己紹介を読んで、この人だなと思ってくださった方が、次に進む場所がないと、そこで終わってしまいます。

順番を作って、200文字にして、出口を置く。やることはこれだけです。経歴を増やす必要は、どこにもありません。