畳屋さんの相談ですが、畳と関係ない方もそのまま読んでください。
どの業界にも、同じ形の悩みがあると思います。
8月のRMMSの問題解決ワークで、ある会員さんからこんな相談がありました。
畳の表面材の話です。
天然のい草にこだわって張り続けるのか。
それとも、世の中の注文がどんどん流れている新しい表面材も、広く扱っていくのか。
今の価格表には両方が載っています。
天然にこだわりたい気持ちはある。
でも世の中はみんな、あちらを張りたがっている。
それでずっと揺れておられる、という状態でした。
聞いていて思ったのは、これは商品の話じゃないな、ということです。
なので、こう返しました。

「人生の選択なんです。これがどっちも正解なんですよ。新しい表面材だけ張っていくのか。世の中みんなそっちを張りたがる中で、うちは違うよと言い続けるのか」
どっちも正解というのは、慰めで言っているわけじゃありません。
「いろいろ取り揃えてます」というメッセージと、「俺は本物を追求している」というメッセージは、市場に対してどちらも成立するんです。
幅広く扱う店には、選びたいお客様が来ます。
本物を追求する店には、本物を求めるお客様が来ます。
選んだ先に、それぞれのお客様がちゃんといるんですよ。
じゃあ、なんで決められないのか。
片方を選ぶと、もう片方を丸ごと失う気がするからですよね。
目の前の注文を自分から捨てるようで、怖いんです。
この気持ちは僕もよく分かります。
ただ、マーケティングの観点で言うと、世の中と逆を行くほうが有利になる条件があります。
「うちは違う」と言い切れるだけの背景を、その店が持っているかどうかです。
今回の会員さんは、天然にこだわっていて、京都でも修行しておられます。
逆を行くための材料が、すでに揃っている。
こういう方は逆張りが成立します。
逆に背景が何もないのに逆張りだけすると、ただの頑固な店に見えてしまいますからね。
もちろん逆張りには代償があります。
世の中が流れている側の注文を、たくさん手放すことになりますから。
ここが今回の会員さんの揺れの正体です。
ただ、僕がここで手放してほしいと言ったのは、注文ではありません。
今の価格表です。
両方を並べて「どちらでもできますよ」と見せておきながら、内心では「本当は天然を張りたい」と迷っている。
その揺れごと、捨て切ってほしいんです。
「今みたいな価格表っていう心の揺れを捨て切らないといけないんです。別に受注してもいいけど、うちはやりたくない、と」
頼まれれば張ってもいい。
商売ですから、それは当たり前です。
ただ、看板には載せない。
聞かれたら「うちはやりたくないんです」と答える。
注文を断るのではなくて、迷いながら受けるのをやめる。
この違いだけで、外から見るとまったく別の店に見えるんです。
ここまで読んで、自分ならどうかな、と考えてみてください。
「分かりました、じゃあそっちで行きます」と、その場で切り替えられる方。
最初から自分の答えを持っていて、周りが何と言おうと変えない方。
そして今回の会員さんのように、聞けば聞くほど揺れる方。
どれが正しいという話ではありません。
揺れるというのは、それだけ両方のお客様の顔が見えている、ということでもあります。
ただ、揺れたまま出す価格表とホームページだけは、お客様に揺れがそのまま伝わっちゃうんです。
伝わり方は、たとえばこんな形です。
価格表を開くと、天然も新しい表面材も、上から下まで全部並んでいる。
ホームページの1枚目は、天然の写真にするか、色とりどりの新しい表面材にするか決めきれなくて、どっちつかずの写真が載っている。
お客様はそれを見て「この店は何屋さんなんだろう」と思うわけです。
そして、決めている店のほうへ電話をかけちゃうんですよね。
どっちか選んだ方が、そのブレない方が、市場へのメッセージを出しやすいです。
選んだ中身よりも、選び切ったことのほうがお客様に届くんです。
そして実務の話をすると、この選択はホームページのトップに何を載せるかに、そのまま出ます。
1ページ目の写真をどちらにするか。
ここだけは、どっちつかずにできません。
両方を扱うこと自体は構わないんです。
色とりどりのショールームを1枚目に見せて、選べる店でいくやり方があります。
お客様の声で、小さいお子さんのいるご家庭を1枚目に見せて、そういう層に向けた店でいくやり方もあります。
天然の畳を1枚目に置いて、本物の店でいくやり方もあります。
どれを選んでも、その1枚がその店のメッセージになります。
価格表の中身で悩む前に、1枚目に何を載せるかを決めてください。
それが決まれば、価格表はあとから自然に整います。

