2026年8月8日、NHK総合「サタデーウオッチ9」で、熊本のい草産地の被害と、支援の動きが取り上げられました。その中で、前日に東京で開いたチャリティーセミナーを紹介していただきました。
映っていたのは、僕がしゃべっている会場の風景が十数秒です。それでも放送を見た親戚から、すぐに電話がかかってきました。十数秒でも人の目には届くんですよね。
このセミナーは、地震から10日で開いています。なぜそんなに急いだのか。そこからお話しします。
支援は、出遅れると届かなくなります
10年かけて分かった、残酷な事実
10年前の熊本地震のときは、個人でお見舞いを持って現地を歩きました。去年の八代の豪雨のときは、25社に声をかけて70万円を取りまとめ、産地へお届けしています。
やり方を変えながら10年やってきて、はっきり分かったことがあります。出遅れてしまうと、周囲の賛同はどんどん得られなくなってしまうという残酷な事実です。
被害が報じられている間は、多くの方が「何かしたい」と思ってくださいます。ところが1か月も経つと、同じお願いをしても反応が変わります。支援する側の熱量が下がるからではありません。世の中の関心が、次の出来事へ移ってしまうからです。
気持ちはわかるんですが、現実って得てして直感とは異なるものです。「困っている人がいるのだから、いつ動いても喜ばれるはず」と思いたくなります。でも実際には、動き出しが遅れるほど、集められる力は小さくなっていきます。
だから今回は、地震の翌日に決めました
7月28日に地震が起きました。被害が大きかったのは八代市、氷川町、宇城市。い草の国内生産のほとんどを占める地域です。
その当日か翌日に、八巻太一さん(有限会社八巻畳工業)と相談して、チャリティーセミナーをやると決めました。
日がなかったので、広い会場は取れていません。準備の行き届かないところもありました。恥も外聞もありません。整うのを待って賛同が冷めるより、整わないまま走るほうを選びました。
席が足りなくなって、大急ぎで作り替えました
告知の翌日に、会場の席が埋まりました
告知を出した翌日には、予定していた席が売り切れてしまいました。
そこで会場のレイアウトを変えて座席を増やしました。それでも当日は来られないという方がいらっしゃったので、後日視聴の制度を大急ぎで作って対応しています。
申し込みは7月31日の時点で24件でした。そこから開催日までに、45件まで伸びています。
8月7日、東京で開きました
第1部は八巻さんの講演。第2部は僕が、畳店が国産の上位ランクを売るための手法をお話ししました。
会場で皆さんの現状を入力してもらい、その場で集計したのですが、結果は分かりやすいものでした。
ブログを300記事以上書いている方は21%。SNSを週に4回以上発信している方は0%。動画を1本も作っていない方が46%。一方で、AIを記事作成に日常的に使っている方は50%いらっしゃいました。
道具は手に入れているけれど、発信の量はまだこれからという状態です。つまり、やれることはいくらでも残っているということなんですよね。
8月8日、産地の映像が全国に流れました
翌8日、NHK総合「サタデーウオッチ9」で放送されました。番組ページに載っている項目名は「熊本・特産品に打撃 広がる被災地支援の輪」です。
NHKでアップされているので、放送の中身をここで要約することは差し控えたいと思います。番組の映像やロゴを当社のページに載せることも、ルール上よくないそうです。
上位ランクが売れると、産地に何が起きるか
八巻さんが中心に扱われたのは、狙いどおりでした
放送でメインに扱われていたのは八巻さんです。四代110年の畳店の代表で、八代のい草の刈り取りに今年で12回続けて参加している方です。
産地のことを語るなら、この人が映るのが正しいと思っています。僕が映って「大阪の経営コンサルタントが支援しています」と伝わるより、畳を作っている人が産地を語ったほうが、見ている方の腑に落ちますよね。
そして畳の材料がどこで作られていて、そこが今どうなっているのかが、畳と縁のない方の目に入りました。八巻さんへの取材のティーアップをした身としては、理想どおりの展開です。
受講料は、全額を八代へ
セミナーの受講料は、全額をJAやつしろい業センターへ寄付します。
会場費も運営費も当社が負担します。受講料から経費を引いて残った分ではなく、いただいた金額をそのままお届けするためです。去年70万円をお届けしたのと同じ産地です。
金額と贈呈の日付は、集計が終わってから改めてご報告します。
来年の苗は、もう植えられています
今回の地震の被害は、今年の収穫には出ません。い草の刈り取りが終わった直後だったからです。出るのは来年です。
第1部で八巻さんが、産地から受けた連絡をそのまま話してくれました。用水路が壊れて、来年刈り取る予定のい草が植え付けできない。植え付けたけれど水が来ないところは、もう枯れ始めている。
それでも農家さんは、苗を田んぼにできる限り植えたそうです。もう目一杯だ、と。
つまり来年の畳表は、この状況の中でもう作られ始めているんです。それが売れるかどうかを決めるのは、来年、畳店が何を注文するかです。
上位ランクが売れると、産地の来年が変わります
じゃあ、寄付だけしていれば産地は残るのか。って話ですよね。
そんな簡単な話じゃないんです。
農林水産省の統計で、令和7年産の畳表の価格を見てみます。国産は1枚あたり2,176円。中国産は951円です。その差は約2.3倍あります。
そして国内で流通する畳表の8割は中国産です。自給率は平成8年に70%ありましたが、平成19年には21%まで落ち、それ以降は20%前後で推移しています。
この状況で、畳店が安いほうを選び続ければ、国産は注文されません。農家さんが手間をかけて作った上位ランクに値がつかなければ、壊れた織機を買い替える判断もできません。価格でしか選ばれない商品を、災害のあとに設備投資してまで作る人はいないですよね。
逆にいうと、上位ランクが安定して注文される状態を作れば、産地の側は次の一手を打てます。手取りが上がり、設備を直す見通しが立ち、来年も再来年も作り続けられる。
僕たちが集めて配ったお金は、今日を助けます。でも来年を作るのは注文のほうなんです。
だから今回のセミナーの中身は、募金や支援の話ではなく、畳店が国産の上位ランクを売って利益を残すための手法だけにしました。
僕にできるのは、売り方の側からの手伝いです
僕はもともと実家の畳店を継いで経営していました。中国産ばかりだった材料の仕事を業務改善して、売上を5倍に伸ばしたところから今の仕事につながっています。
ただ、い草を育てたことはありません。織機も触ったことがない。今の僕にできるのは、売り方の側からの手伝いだけなんです。
10年前は1人でお見舞いを持って歩き、去年は25社で70万円を取りまとめ、今年は地震の翌日にセミナーを決めて、10日後に東京で開き、その翌日に産地の映像が全国に流れました。ここまで10年かかりました。
ただ、ここで終わりにするつもりはありません。
今回、声をかけて45件のお申し込みをいただきました。急な話にもかかわらず、これだけの方が動いてくださったということです。次に何かが起きたときは、もっと速く、もっと大きな輪で動けるようにしていきます。支援の輪は、一度作って終わりではなく、広げ続けるものだと思っています。
そして畳店の皆さんには、来年の注文のことを頭の片隅に置いておいていただけたらと思います。産地が来年も作り続けられるかどうかは、僕たちが何を発注するかにかかっています。
今回とこれまでの一次資料
今回のセミナーと、産地の状況が分かる資料です。
セミナー案内 2026年8月7日 東京 令和8年熊本地震チャリティーセミナー rmms.jp 農林水産省 令和8年1月 いぐさをめぐる事情(生産農家数・作付面積・畳表の価格と自給率) www.maff.go.jp プレスリリース 2026年8月4日 令和8年熊本地震で被災したイ草産地へ、セミナー受講料を全額寄付 prtimes.jp
