「季節によって売上がすごく上下するんです。閑散期に何をすればいいか、正直わからなくて」。こういう相談を、私はよく受けます。
繁忙期は目の前の仕事に追われて忙しいのに、閑散期になると、ぱたりと仕事が止まる。新しいお客さんを探そうにも、なかなか腰が上がりません。かといって、今のお客さんにもう一品売ろうにも、何を提案すればいいのか思いつかない。そういう職人さん・店主さんは、本当に多いですよね。
RMMSでは、経営のテーマを扱う1Dayセミナーの翌日に、問題解決ワークという場を設けています。参加者一人ひとりの課題を、その場で個別に取り上げていく会です。2026年2月の問題解決ワークで、ある畳店の社長から、まさにこの相談がありました。今日は、その場で組み上がった発想を、開催レポートとして紹介します。
「閑散期に何をすればいいか分からない」を、こう捉え直す
この方は、RMMSでの取り組みを通じて、一番仕事の少なかった年始から2月あたりの予約が、少しずつ埋まり始めていました。そこで出てきたのが、次のステップとしての問いです。「じゃあ、春の閑散期には何をすればいいのか」。
畳替え自体は、春には当たりにくい仕事です。かといって、値引きキャンペーンを打ったところで、閑散期の穴が埋まるわけではありません。何か、本業の周辺に置ける仕事はないか。ワークは、そこから始まりました。
季節によって波がある、という悩みは、畳業界に限らず多くの業種に共通します。だからこそ、この話は他の業種の方にもそのまま参考になるはずです。
畳替えの前に、『模様替え』を売る
そこで出てきたキーワードが、模様替えでした。
畳を替える前に、まず部屋の荷物を片付けたい。そう思っているお客さんは、実はたくさんいます。ところが、自分ではなかなか片付けられません。そこで、片付けと不用品の処分をセットにして提案するんです。建築業界の外では、これを「模様替え」と呼ぶそうです。
畳替えや内装工事の前段階として提案すれば、お客さんにも違和感がありません。むしろ、順番として自然です。しかも、これは本業が当たりにくい春にちょうどはまる仕事です。本業の手前に、本業の一歩手前の仕事を置く。この考え方が、今回の相談の核でした。
しかもこの場では、思いつきで終わりませんでした。模様替えをテーマにしたセールスレターの構成まで、7つのステップとして一気に組み上がったんです。アイデアを出して終わりにせず、実際に使える形まで落とし込む。これも、問題解決ワークの値打ちだと思っています。

なぜ便利屋ではなく、あの畳屋さんに頼むのか
ただ、家の中に人を入れるのは、お客さんにとってかなりの心理的ハードルがあります。知らない人に部屋を見られるのは、想像以上のストレスなんです。
だからこそ、地元で何十年も商売してきたお店の出番です。「あの畳屋さんなら」「昔からお世話になってるお店なら」。そういう信頼関係があれば、その壁を越えられます。便利屋さんにはない強みです。

価格の組み立て方もシンプルです。産廃業者の価格表を土台に、自分の工賃と諸経費を乗せる。特別な値付けの技術はいりません。地元の信頼があるからこそ、この程度の組み立てで十分に成立するんです。
便利屋さんでも、ちゃんとお金をもらってやっている業者はもちろんあります。ただ、片付けや掃除を頼む側からすれば、素性の分からない業者より、長年付き合いのある畳屋さんのほうが安心できます。この安心感こそ、地元で商売を続けてきた店だけが持てる資産です。
新規開拓より先に、既存客の一歩手前を見る
この相談から持ち帰ってほしいのは、閑散期の仕事は、新しいお客さんを探す前に、今のお客さんの一歩手前に見つかることが多い、ということです。
畳替えという本業だけを見ていると、閑散期は仕事のない時期にしか見えません。ですが、本業の周辺まで視野を広げると、季節の波を埋める仕事が見えてきます。しかも、それは既存のお客さんとの関係の中に、すでにあるものです。新しく開拓する必要はありません。
新規開拓には、時間もコストもかかります。それより先に、今のお客さんに、もう一品置ける場所がないか。そこを見直すほうが、閑散期の仕事づくりとしては近道なんです。
こういう「本業の周辺にある仕事」を見つけるのは、同業者同士の会話だからこそ出てくる発想です。一人で自分の商売だけを見ていたら、なかなかここまでは辿り着けません。
おわりに
季節で売上が上下する、閑散期に何をすればいいか分からない。この悩みは、新しい集客ではなく、本業の一歩手前を見直すことで解けることがあります。畳替えの前に模様替えを売る、というのは、その一つの形にすぎません。
自社の本業には、どんな一歩手前の仕事があるでしょうか。新規開拓より先に、今のお客さんとの関係の中に、答えがあるかもしれません。一人で考えると見えにくいところなので、よかったら一度、あなたの閑散期の使い方を一緒に整理させてください。
