先日の問題解決ワークで、こんな相談が出ました。
問題解決ワークというのは、会員さんがいま困っていることをその場に持ってきて、参加メンバーみなで解決していく会です。
畳店にブログを読んで来てくださった新規のお客様がいらっしゃいました。
ところが、ご依頼は部屋の一部の3枚だけの畳張り替えだったそうです。
このお客様と付き合うべきでしょうか、という相談でした。
せっかくブログ経由で来てくださった、初めてのお客様です。
断ったら二度と来てくださらないかもしれません。
かといって受けたら、手間ばかりかかって儲けはほとんど出ません。
迷いますよね。
畳店さんに限らず、小さい依頼をどこまで受けるかで悩んでおられる社長さんは多いと思います。
僕がその場で返した言葉はこうです。

「その部屋の3枚だけ替える理由は何ですか、残りは大丈夫なんですか。僕は基本、受けないです。部屋単位で揃えないと、誰かがつまずいて怪我をするか分からないし」
受けるかどうかより先に、なぜその3枚だけなのかを聞きます。
一部屋の中で3枚だけ新しくすると、古い畳との間に段差ができます。
その段差に、家族の誰かがつまずくかもしれません。
だからお客様には、犬が怪我しますよ、というところまで言います。
そこまで言って初めて、部屋単位で揃える理由が伝わるからです。
ただ、受けない理由は事故だけではないんです。
問題解決ワークではこう続けました。
「3枚で了解して受けたんだったら、他のことも『どうせ』ってなるじゃないですか。だからこれの答えはしつけなんです」
3枚だけの表替えを、はいわかりましたと受けたとします。
その瞬間から、お客様から見てその店は、頼めば何でも聞いてくれる店になります。
次にこちらが「残りの畳も替えておいたほうがいいですよ」とお勧めしても、どうせ言えば3枚でやってくれる店の言うことです。
まともに聞いてもらえません。
値段の話で揉める元は、ここにあります。
最初の一件で、この店はこういう受け方をする店だと伝わっていないから、その後の提案が全部、値切りの入口になってしまうんです。
お客様をしつけるなんて、と引っかかった方もいらっしゃると思います。
僕も言い方はきついなと思いながら、ワークではもう一歩踏み込んでこう言いました。
「全部しつけです。『お座り』と言ったら座ると教えなきゃいけないんで」
犬の話に聞こえますけど、教える中身は、この店ではこう受けます、これは受けません、という約束事です。
お客様はその店のルールを知らないまま来られます。
知らないのですから、最初の一件で教えるしかありません。
一度「どうせ」になってからルールを教え直すのは、最初に教えるよりずっと大変です。
では、どうやって教えるのか。
言い方の話ではなくて、見積もりの決め方の話になります。
3枚のご依頼が来てから、受けるかどうか、いくらにするかを考えるから揉めるんです。
その場で考えた値段には根拠がありません。
根拠がないから、お客様も「もう少し何とかなりませんか」と言いやすくなります。
受ける条件を先に決めて、価格表に書いておくんです。
ワークでお伝えした形はこうです。
最低施工枚数は5枚と決めます。
4畳半の部屋も、6畳の部屋も、5枚として受けます。
それより少ない枚数のご依頼は、出張料を別にいただきます。
この条件を、価格表にそのまま書いておきます。
こうしておくと、3枚だけのご依頼が来たときに、その場で悩まなくて済みます。
価格表にこう書いてあります、とお見せするだけです。
出張料を含めた値段を見て、それでもお願いしますと言われれば受ければいいし、やめておきますとなれば、それでいいんです。
他の工事でもそれはできないよね、という話をすれば、お客様も「そうだよね」と分かってくださいます。
こちらが決めた条件を、お客様が知ったうえで頼んでくださる。
最初の一件がそういう形で始まると、次に「残りも替えませんか」とお勧めしたときも、「どうせ」ではなくちゃんと聞いてもらえます。
値段を先に決めてあるから、値段の話で揉めません。
受ける条件を先に決めてあるから、断るかどうかでも悩みません。
小口の依頼に振り回されなくなる、というのはそういうことです。
上手に断る話ではなくて、悩む場面そのものを見積もりの段階で片付けておく話なんです。
納品より前に、価格表の一行が、次の提案を聞いてもらえるかどうかまで決めています。

