先日の問題解決ワークで、安い方の商品のデメリットをお客様にどう説明しているか、という話になりました。
問題解決ワークというのは、会員さんがいま困っていることをその場に持ってきて、参加メンバーみなで解決していく会です。
この日は畳屋さんの話だったので、題材は畳表でした。
畳表には、い草のものと、和紙表や化学表と呼ばれるものがあります。
和紙表や化学表は安い方の商品で、い草と比べると足りないところもあります。
その足りないところを、お客様にどう伝えるか。
どの商売でも、安い方と高い方を並べて売っている店なら、必ずぶつかる場面ですよね。
会員さんの説明を聞いていると、香りがしない、日焼けはしないけれど黒ずんでくる、といった言い方をされています。
どれも本当のことです。
ただ、香りがしないと言われても、ピンとこないお客様もいらっしゃいますよね。
言っている側は正確に説明しているつもりでも、聞いた側の頭に絵が浮かんでいないことがあるんです。

僕が畳店をやっていたころは、少し違う言い方をしていました。
化学表の主成分はポリプロピレンです。
なので「下敷きに使っているあの成分です」と言っていました。
なぜ下敷きなのか。
問題解決ワークでは、こうお話ししました。
「プラスチックより嫌な言い方を探しました。下敷きのやつ。絶対いいイメージ持たないからね。」
プラスチックと言われても、身の回りはプラスチックだらけですから、そのまま聞き流されてしまいます。
ところが下敷きと言われると、小学生のころ机の上にあった、あのペラペラした板が頭に浮かびます。
畳の上にあの感触を想像すると、あ、これはちょっと、となりますよね。
そこで初めて、デメリットが伝わったことになります。
念のため言っておきますが、嘘は一つも言っていません。
成分の話をしているだけです。
同じ成分でも、どの品物の名前で呼ぶかで、お客様の実感はまるで変わります。
本当のことの中から、いちばん実感の湧く言い方を一つ選んでいるだけなんです。
それともう一つ、この説明をする前に、必ず聞いていたことがあります。
「ペットがいたりとか、水がこぼれる可能性はありますか、と聞いて、なかったら大丈夫ですよね、と。」
これは何をしているかというと、そのお宅に化学表を選ぶ事情があるかどうかを、先に確かめているんです。
犬や猫がいる。
小さいお子さんがしょっちゅう水をこぼす。
そういうお宅なら、安い方を選ぶ理由がちゃんとあります。
逆にそういう事情がないなら、わざわざ下敷きの成分を畳にする理由もないですよね。
だから「なかったら大丈夫ですよね」で、い草の方に話が戻るわけです。
順番が大事で、デメリットを言ってから事情を聞くのではなく、事情を聞いてからデメリットを言う。
お客様の方で「うちには要らないな」と気づいてもらう組み立てです。
こちらが決めるのではなく、お客様が自分で決めた形になります。
ここまで読むと、なんだか回りくどいと思われるかもしれません。
高い方がいいなら、最初からそう言えばいいじゃないか、と。
でも、それをやると失敗します。
問題解決ワークでお話ししたのはここです。
「押せば押すほど人は歯向かうんで。『あっちがいいですよ』って言って、こっちを選ばせるっていう。」
こちらが高い方を薦めれば薦めるほど、お客様は売りつけられている気がして、安い方に寄っていきます。
経営者の皆さんも、営業の電話で押されるほど断りたくなった経験、ありますよね。
お客様も同じです。
押した分だけ、逆の方へ動くんです。
だから逆をやります。
安い方で済む事情があるなら「あっちでいいですよ」と本当に薦める。
事情がないなら、下敷きの成分ですよ、と本当のことを実感の湧く言葉で伝えて、あとは黙る。
選ぶのはお客様です。
そうすると、押していないのに、高い方が選ばれやすくなるんです。
ご自分で選んだ畳ですから、納品のあとも「いい方にしといてよかった」と思っていただけます。
畳に限った話ではありません。
安い方のデメリットを隠す店は、あとで揉めます。
高い方を押し付ける店は、歯向かわれます。
その真ん中が、先に事情を聞いて、デメリットは実感の湧く言葉で一つだけ言って、あとは押さない、という順番です。
あなたの商品の「下敷き」にあたる言葉は何でしょうか。
一度、探してみてくださいね。
