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チラシの反応が出ない原因を、紙やデザインではなく企画の側から見直す話。

チラシの反応がない原因は紙でも色でもない ― 代理店に任せず社長が下絵を書く2工程

面白いほど売れるチラシと、全く売れないチラシ。その差はカラーでも紙の色でもサイズでもなく、広告代理店が製作しているか、社長自身が企画しているかの違いです。広告ができるまでの4つの手順のうち、社長が自分の手で書くべき工程はどれなのかをお話しします。

机の上の紙に鉛筆でチラシの下絵を描く店主と、壁に貼られた無地のレイアウト案のイラスト

刷って、配って、また刷る。紙を厚くして、色を変えて、写真を大きくして。代理店の担当者も一緒に考えてくれて、そのたびに前より見栄えのいいものが上がってきます。それでも電話が鳴らない。

「次はもっといいデザインにすれば、さすがに反応が上がるはずですよね」

そう思いますよね。気持ちはよく分かります。ただ、面白いほど売れるチラシと、全く売れないチラシを並べて見比べても、差が出ているのはデザインではないんです。

カラーでしょうか。紙の色でしょうか。サイズでしょうか。どれも違います。

今回は、その差がどこで生まれているのかというお話です。

先にお伝えしておくと、僕はデザインのセンスで勝ってきた人間ではありません。絵は描けませんし、色の組み合わせを褒められたこともないんです。初めて自分でチラシを出したときなんて、社員全員に反対されました。チラシなんか出したら仕事のない会社だと思われて恥ずかしい、と。それでも夕暮れ時から数時間、一人で自転車に乗って配って回りました。結果、反応はゼロでした。配った先で怒鳴られただけです。

紙のせいでも、デザインのせいでもなかったんですね。順番にお話しします。

広告は、たった一人のお客様に宛てて書くものです

同じ広告を見て、日本人全員が同じ買い方をするでしょうか

よそで当たったチラシを丸ごと真似しても、同じ反応が上がるとは限りません。やってみた方なら、心当たりがあると思います。

考えてみれば当たり前で、広告に反応するのは、それを見た人のごく一部です。人口の半分以上が熱にうかされたように同じ行動を取るなんて、あり得ないですよね。つまり、どんなに当たった広告でも、動いたのは圧倒的な少数派なんです。

ということは、僕たちがお手本にしてきた「当たった広告の型」は、その少数派の買い方を集めて、あたかも全員に当てはまるかのようにまとめ直したものだったことになります。それを自分の商売にそのまま持ってきて、反応が出ないと悩む。順番からして無理があります。

当たったチラシを真似するのは、いちばん安全に見える手です。社内でも説明しやすいですしね。だからみんなやります。ただ、真似できるのは形だけなんです。誰に宛てて書いたのかという肝心のところは、紙面には写りません。

データで区切っても、お客様の顔は出てきません

じゃあ、自社のお客様をきちんと絞ればいいって話ですよね?そこで多くの方が手を伸ばすのがデータです。

  • 年齢
  • 性別
  • 住んでいる地域
  • 世帯の所得

たしかに、きれいに区切れます。

でも、区切ったあとで一度考えてみてください。その区分に当てはまる人の顔が、頭に浮かびますか。

浮かばないんです。区切りというのは、こちらが集計しやすいように引いた線であって、お客様が自分で名乗った肩書きではありません。「三十代後半・男性・持ち家あり」と書かれた紙に向かって手紙を書けと言われても、書き出しの一行すら出てこないですよね。

データでどれだけ細かく区切ってもお客様の具体像が見えないのなら、実在する特定のお客様にメッセージを届けたほうが確実です。どちらが正しい絞り込みかというお話ではありません。手紙の宛名が書けるほうを選ぶ、というお話です。

顔を思い出せるお客様を、一人だけ選んでください

やり方は簡単です。これまでお付き合いのあったお客様の中から、記憶に残っている理想的な方を一人だけ思い出します。その人に伝わるように、超個人的な案内の手紙を書く。それだけで広告の企画としてまとまることが多いんです。

一人に決めると、書ける言葉が変わります。思い出すのは、たとえばこんなことです。

  • あの奥さんは、何を心配していたか
  • どの一言で「じゃあお願いします」に変わったか
  • 最後にどこで迷って、何を確かめてから決めたか

一方で、一人に絞るのは怖いですよね。その人以外のお客様を切り捨てるように感じますから。僕も最初は同じことを思いました。ですが実際に配ってみると逆で、一人に宛てて書いた手紙のほうが、たくさんの方に「これは自分のことだ」と受け取ってもらえます。

広告とは一人のお客様のためにつくるものです。この一点を外したまま進むと、後の工程を何回やり直しても戻ってきません。

それでも任せると当たらないのは、なぜでしょうか

誤解のないように先にお伝えしますが、広告代理店は必要です

版下を作って、印刷所を押さえて、折込の手配をする。素人が同じことをやろうとしたら、それだけで何日も潰れます。餅は餅屋で、任せたほうがいい仕事は確実にあるんです。

そのうえでのお話なんですが、広告代理店は、一社だけが儲かるようなチラシは作ってくれません。

意地悪をしているわけではないんですね。代理店の仕事は、同じ地域の同じような業種に、同じ品質のものを納めることです。どこの会社が使っても形になるように作る。それが仕事として正しい。作りは正しいのですが、その正しさが売れない元なんです。

一社だけが突き抜けて儲かるチラシというのは、その会社にしか書けない事情の上に成り立っています。どこにでも当てはまるものを作れば、どこにも刺さらないものになります。

「所得がある程度以上の方向けです」と言い出した方のチラシが、トンチンカンになる理由

広告作成の講座をやっていると、データに翻弄される罠にかかる方が、必ずと言っていいほど数名いらっしゃいます。こんな言い方をされるんです。

「都会に住んでいる働き盛りの男性向けの商品なんですよ」「結婚していない女性で、所得がある程度以上の方向けのサービスなんですよ」

実際に講座で出た言葉です。どなたの発言か分からないように、住んでいる場所と年齢の幅、それに金額だけをぼかしてあります。言い方の運びはそのままです。

この方たちは、いちばん真面目に考えています。ふわっと「みなさん向け」と言わずに、きちんと絞っているつもりなんですね。それなのに、出てくるチラシはトンチンカンになります。

理由は単純で、この言い方をした時点で、頭の中からお客様の顔が消えているからです。「都会に住んでいる働き盛りの男性」という人は、どこにも実在しません。実在するのは、去年うちで買ってくださった、あの人です。実在しない相手に宛てて書くから、実在する人に届かないんです。

こういう資料の作り方をしてしまう人、ほんとうに多いですよね。僕も昔やりました。条件を並べた資料は、それらしく見えるんです。絞るなというお話ではありません。絞る先を、条件ではなく人にしてください。

売れるアイデアは、社長の頭の中にしかありません

なぜ社長本人が書かないといけないのか。現場でお客様と話してきたのが、社長だからです。

代理店から仕上がったチラシを受け取るだけの社長と、自分で下絵を描く社長を左右で見比べたイラスト
  • どの一言で断られたか
  • 値段の話をどの順番で出したら、話が続いたか
  • 納品したあと、何に感謝されたか

こういうものは、伝票にも顧客名簿にも残りません。社長の頭の中にだけあります。代理店の担当者がどれだけ優秀でも、ヒアリングシート一枚では出てきません。出てこないものは、当然チラシにも載らないわけです。

絵が描けないから任せている、という気持ちはよく分かります。僕もそうでした。ただ、任せていたのは絵ではなくて、中身のほうだったんですね。売れるアイデアは社長の頭の中にしかない。その現実を踏まえて広告を作っていくと、反応が取りやすい広告が自ずと生まれます。

構想と下絵は、社長が自分の手で書いてください

広告ができるまでは、構想・下絵・製作・印刷の4つです

広告が形になるまでの手順は、4つに分かれます。

  1. 構想
  2. 下絵
  3. 製作
  4. 印刷

このうち、その広告が売れるか否かを大きく左右するのは、前の2つです。構想と下絵。社長が自分の手で書くのは、この2つだけでいいんです。製作と印刷は、さきほどお伝えしたとおりプロの仕事ですから、任せてかまいません。

売れるチラシか否かを分けるのは、下絵のレベルまで自分で書いているか、基礎となる原稿を自分で用意できているかどうかです。これが大前提になります。

下絵と言っても、うまい絵を描けというお話ではありません。どこに何を置いて、どういう順番で読ませたいか。それが分かる程度の落書きでじゅうぶんです。僕の下絵も、人様にお見せできる代物ではありません。

一目で何の広告か分かりますか。そのあと何をすればいいか、書いてありますか

反応が得られやすい広告、読み手が行動に移りやすい広告には、一定のパターンがあります。ツカミとオチです。

ツカミは、一目で何の商品を扱っているのかが分かること。オチは、具体的な行動が明記されていることです。

ツカミが弱ければ、そもそも手にも取ってもらえません。オチが弱ければ、読んでもらえてもお客様を動かせません。当たる広告は、必ず分かりやすく作られています。人は、分からないと感じたものを無意識に避けてしまいますから。

手元のチラシで確かめるなら、見るところは2つです。

  • 裏返しに伏せて置いて、1秒だけ見て、何屋のチラシか分かるか
  • 読み終えた人が次に何をすればいいのか、書いてあるか

きれいに作り込んだチラシほど、この2つが抜けます。情報を整えているうちに、いちばん大きく出すべき一言が、だんだん小さくなっていくんですね。

コンセプトが決まる7つの質問

構想の中でも、いちばん作り込んでほしいのがコンセプトです。基礎となる部分ですから、ゆるいまま先に進むと、何を伝えたいのか分からないチラシになってしまいます。

コンセプトの作り方がいまいち分からない、という方のために、7つの質問に答えるだけで見えてくるシートを用意しています。

  1. 期待するお客様の行動は何か(購入、申込、参加など)
  2. その行動を取ってもらうために、どんなお得な提案をするか
  3. その提案をする、もっともらしい理由は何か(在庫処分、手遅れになる前に、など)
  4. その提案に飛びつくお客様は、普段どんな問題に頭を悩ませているのか
  5. その問題を放置すると、どうなるか
  6. 以上を100字以内で要約すると、どうなるか
  7. 何と語りかけたら、その要約を読んでもらえるか(キャッチコピー)

上から順に答えていくと、6番でコンセプトが出て、7番でキャッチコピーが出ます。

多くの方は、1番と2番だけでチラシを作り始めます。売りたいものと、値引きの額。その2つだけで作ると、お客様側の事情が一行も入りません。

しんどいのは4番と5番です。自社の商品ではなく、お客様の困りごとを書く欄ですから。埋めようとすると手が止まります。止まるのは、宛先が決まっていないからなんです。一般論で埋まる質問ではありません。

下絵まで書けたら、そこから先は任せてかまいません

チラシの反応が出ないとき、まず疑いたくなるのは紙とデザインです。分かりやすいですし、直せば見た目は確実に良くなりますから。

でも、見比べる場所が違うんですね。売れたチラシと売れなかったチラシを並べて、色や紙質やサイズを比べても、差は出てきません。比べるなら、下絵を誰が書いたか、原稿を誰が用意したかです。差がついているのは、その一点です。

広告ができるまでの4つの手順のうち、社長が持つのは前の2つだけになります。構想と下絵を自分の手に残して、製作と印刷はプロに渡す。この線を引き直すと、代理店との付き合い方も変わってきます。これまで「いい感じにお願いします」と言っていたところへ、下絵と原稿を持って行くことになりますから。

最初は気恥ずかしいと思います。素人の落書きを、毎日きれいな紙面を作っている人の前に出すわけですから。僕も最初は謝りながら出していました。

それでも、渡さないほうがいいんです。刷る前の2工程には、社長にしか書けないものが入っています。デザインを直すのは、そのあとでじゅうぶん間に合います。