「うちはチラシが当たってるからそれでいい」
折込を入れれば問い合わせが鳴って、今月の現場は埋まっている。来月も半分は埋まっている。そういう時期に、わざわざ別の入口を作る理由なんてないんですよね。そんな時間もありません。
そのとおりです。当たっている集客を止める必要は、まったくありません。ただ、当たり続けるかどうかと、止まったときに会社が残るかどうかは、別の話なんです。
今回は、売上をお客様の入ってきた入口ごとに割って、どれか一つが止まっても倒れない配分に近づけるというお話です。
集客の相談を受けるとき、僕がまず聞くのは新しい手法のことではありません。いま入口が何本あるか、です。なので今日お見せするのも、思いつきの理想形ではなく、実際にそうなっている一社の内訳です。
どれがこけても死なない、が合格ラインです
5つの入口に2割ずつ
まず、どこの数字なのかを先に書いておきます。規模が分からないと、読んでいるあなたが自分の会社に当てはめられませんからね。

社長が一人で全部やる、いわゆる一人親方ではありません。職人さんがいて、現場に出て、工事を請ける商売です。一般のお客様の家に上がる仕事もあれば、同業から回してもらう仕事もあります。年に何度か折込チラシを入れる、それぐらいの会社だと思ってください。
で、この会社の売上を、お客様が入ってきた入口ごとに割るとこうなりました。
- 紹介・リピート・来店 …… 2割
- ネット …… 2割
- 下請け …… 2割
- チラシ …… 2割
- DM …… 2割
きれいに5等分です。これを見せてもらったとき、僕はこう言いました。
「紹介・リピート・来店が2割、ネット2割、下請け2割、チラシ2割、DM2割。どれがこけても死なない、いいバランスなんですよ。」
狙ってこうなったわけではないと思います。やれることを順番にやってきた結果、たまたま5つ揃って、たまたま均等になった。ただ、たまたまであっても、この形は強いんです。
一本足打法では太刀打ちできない
なぜ強いのか。2つの会社を並べて比べてみます。
売上の全部をチラシから取っている会社と、5つの入口から2割ずつ取っている会社。売上も利益も同じだとします。
ある月、折込の反応が半分に落ちたとしましょう。理由は何でもいいです。近所に同業が新しく入った、雨が続いた、新聞を取る家がまた減った。どれも自分ではどうにもできない理由ですよね。
チラシ一本の会社は、その月の売上が半分になります。5つに割ってある会社は、2割あったチラシが1割になるだけです。売上でいうと、9割は残ります。
同じことが起きて、半分になるのと、1割減るのと。打撃は5分の1で済むと言えます。
数字で書くとあっさりしていますが、売上が半分になった月を通ったことのある人なら、この差がどれだけ怖いか分かると思います。ああいう月は、判断が全部おかしくなるんですよね。利益の出ない仕事を取りに行ったり、値引きしたり、慌てて広告費を突っ込んだり。そうやって傷を自分で広げます。
だから入口を増やすのは、売上を伸ばすためというより、慌てなくて済む状態を作るためなんです。折込チラシだけの一本足打法では太刀打ちできない、と僕がずっとお伝えしてきたのは、この意味です。一本足で立つより二本足のほうが倒れにくい、というのも経営と同じ原理ですよね。
折込チラシは、コストのかかる集客法です
もう一つ、チラシの位置づけを先にはっきりさせておきます。
折込チラシは、新規のお客様に来てもらうための、コストのかかる集客法です。効かない、という意味ではありません。効くけれど、1件取るのに一番お金がかかる入口だ、という意味です。
比べる相手は、これまでお付き合いのあったお客様です。一度買ってもらった方にハガキや手紙を送って、もう一度買ってもらう。かかるのは印刷代と切手代くらいのものです。費用対効果でいえば、こちらのほうがリターンは多いんです。
だから「チラシを撒いて反応が上がった、よかった」で終わってはいけません。むしろ、ここからが勝負なんですよね。折込で始まったお付き合いを、どうやって長く続けるか。そこまで設計して、はじめてチラシ代が回収できます。
ビジネスの中核は、購入後のお付き合いから
さっきの5つの入口を、もう一度見てください。
紹介・リピート・来店。そしてDM。この2つは、どちらも一度取引したお客様から生まれる入口です。5つのうち2つ、割合でいうと4割が、過去のお客様から返ってきている売上ということになります。
新規で来てもらった1件を、そこで終わらせるか、次につなげるか。この扱い一つで、数年後の売上の半分近くが変わります。
具体的には、買ってもらったあとにこれだけのことをやります。
- 商品を納めたその日に、お客様のコメントをいただく
- 購入から3日目に、感謝を伝えるものが届いている
- 1週目に、お手入れや活用のヒントが届く
- 3週目に、今後のお付き合いを予感させるプレゼントが届く
- それ以降は、セールの時期にハガキ、閑散期にニュースレター
派手なことは一つもありません。ビジネスの中核は、購入後のお付き合いから始まります。チラシは、その付き合いを始めるための入場料みたいなものなんです。
バランスが良すぎると、動けなくなります
「こっから先出るの怖いですね」
ここまで、良い話ばかりしてきました。5つに割れている、どれがこけても死なない、理想的だと。
ただ、この会社にはもう一つの顔があります。本人と話していて出てきたのが、この言葉です。
「こっから先出るの怖いですね」
分散が効いている会社ほど、次の一手が出しにくくなる。正直に言うと、僕は最初「贅沢な悩みですね」と思いました。でも、話を聞いていくと、そうでもないんですよね。
うまくいっている状態は、触りたくない
なぜ怖いのか。
5つが2割ずつで回っているということは、どれか一つを増やそうとしたら、時間か人かお金を、今どこかで使っている分から引っぱってくることになります。新しく何かを始める余力は、どこかから抜くしかないわけです。
ところが、5つとも回っているので、抜いていい場所が見当たりません。チラシを減らせば、その2割が減るかもしれない。下請けを断れば、その2割が消えるかもしれない。どれも今、ちゃんと売上になっているものです。
今月の売上を作っているものに手を入れて、来月落ちたら、誰のせいでもなく自分の判断のせいになりますからね。放っておけば、少なくとも今と同じです。だから触らない。これは怠けているのではなくて、まっとうな判断なんです。
ただ、そのまっとうな判断を5年続けると、5年前と同じ配分のまま、5年分お客様が歳を取ります。新聞を取る家は減り続けます。DMを送る住所も、少しずつ古くなります。同じ配分を守っているつもりで、中身は毎年やせていくんですね。
止まっていられないのは、そういうわけです。
どこを減らして、どこに振るか
で、話は「増やす」ではなく「入れ替える」になります。
5つとも今のまま維持して、そのうえで何かを足す。これはできません。できるのは、どれかを減らして、その分をどれかに寄せることだけです。
判断の材料は、2つあれば足ります。
- 1件取るのに一番お金がかかっているのはどれか
- これから伸びる見込みがあるのはどれか
お金のかかる入口を減らして、伸びる入口に寄せる。言い換えれば、資源の選択と集中です。
そして、入口が5つあるから、今月チラシの反応が悪くても、月末まで慌てて動く必要がないんです。落ち着いていられるうちに、次の配分を決めてしまう。分散させておくことの本当のありがたみは、こういう時に出ます。
減らすチャネルと、増やすチャネルを決めました
チラシを減らすという判断
で、この会社が決めた新しい配分はこうです。
- ネット(ブログ) …… 4割
- 紹介・リピート …… 2割
- 同業からの下請け …… 2割
ここまでで8割です。残りをチラシとDMで持つ形になります。つまり、これまで単独で2割あったチラシは、DMと合わせて2割の枠に入ることになります。
減らすのはチラシです。理由は、さっき書いたとおりです。5つの中で、1件取るのに一番お金がかかっている入口だからです。
ただ、やめるのではありません。減らすだけです。チラシは新規のお客様に会える入口ですから、そこを閉じてしまうと、数年後に紹介もリピートもやせます。入口を1つ捨てたら、5つに割ってある意味がなくなりますからね。
減らす、まで。そこで止めるのが今回の判断です。
ブログで紹介した商品が売れる
では、増やすほうです。
なぜネットなのか。理由は単純で、この会社ではすでにそういうことが起きているからです。ブログで紹介した商品が売れるんです。お試しのつもりで一度やってみた工事が、記事にしたら注文として返ってくる。
考えてみれば当たり前なんですよね。リフォームでも修繕でも、お客様は「頼んだらどうなるのか」が分からないから頼めないわけです。金額も、日数も、終わったあとの見た目も、想像がつかない。そこに、実際にやった一件が写真つきで載っている。自分の家と似た状況の家が、いくらで、何日で、こうなりましたと書いてある。これで迷いが消えます。
チラシとブログを、この一点で比べてみます。チラシに載せられるのは「やります」までです。ブログに載せられるのは「やりました」までです。同じ工事の話をしていても、読んだ人が次に取る行動はまるで違うんですね。
だから、増やす先はネットに決まりました。新しい手法だからではありません。この会社で現に売れている入口が、そこだったというだけのことです。
工事が終わったら、レポートを書く
ネットを2割から4割にする、と言葉で言うのは簡単ですが、で、具体的に何をやるのって話ですよね。
やることは決まっています。工事が終わったら、しっかりレポートを書く。これだけです。
とはいえ、やっている本人からすると、工事が終わったあとにレポートを書くのは、正直めんどうなんですよね。現場が終われば次の現場が待っていますから。僕もそういう仕事は後回しにしたくなります。
ただ、書いた1本は消えません。撒いたチラシは翌日にはゴミ箱ですが、記事は3年後も同じ場所にあって、3年後のお客様に読まれます。チラシを減らした分の手間とお金を、工事が終わったあとの30分に回す。それが、売上を途切れさせない近道です。
しかも、決まってしまえば毎回同じ作業です。大きい工事でも小さい工事でも、終わったらレポートを書く。やることが全部の現場で同じだから、今月は何をやろうかと月初に考える必要がないんです。
最後にもう一度だけ書いておきます。各2割が正解、という話ではありません。5つ揃っていれば強いのは確かですが、揃った瞬間に動きづらくなるのも確かです。どれがこけても死なない配分をまず作って、そのうえで、こけてもいい範囲で1つずつ入れ替えていく。
まずは今期の売上を、入口ごとに割ってみてください。紙に入口の名前を書いて、割合を入れるだけです。一つの入口が半分を超えていたら、それは強いという意味ではなく、その入口が止まった月に会社が半分になるという意味です。
