全員が何かを抱えている
経営者と話していると、必ず出てくる話があります。家族の話です。
奥さんが勉強させてくれない。親父が邪魔する。母親の介護でギクシャクする。娘が口を聞いてくれない。
多かれ少なかれ、みんな何らかの問題を抱えています。でも経営スクールやコンサルの場では、こういう話はしません。「経営と関係ないから」と切り分けられます。
関係ないわけがありません。
20世紀の経営者と21世紀の経営者
20世紀は「家族を犠牲にして働く」が当たり前でした。仕事に集中して、家のことは妻に任せて、それで会社が回った時代です。
21世紀はそうはいきません。妻の問題行動、子供の不祥事が社会的基盤にダメージを与えます。平和な家庭像を提示し続けないと従業員からの支持を失い、新規採用もままなりません。
経営者の家庭が壊れていたら、会社も壊れます。だから家族関係の改善を経営計画に組み込みます。
私自身の原体験
私がこの考えに至ったのは、自分の経験があるからです。
年間5000時間の残業。収入は少なく、子供はまだ小さい時期でした。奥さんには相当な苦労をかけました。その上に父親との対立もありました。
独立した時、奥さんからは「たとえ失敗しても2度と会社には戻るな」と言われました。もし収入が300万円を切るようなことがあったら、中古トラックを買ってたこ焼き屋をしよう。建築士も宅建も持っていたから、不動産会社に入社して営業マンをしよう。とにかく畳屋に戻らない約束をしていました。
家族に迷惑をかけてきたからこそ、独立後は家族を犠牲にしない経営を基本に据えました。切り離すのではなく、一緒に設計します。
合宿で家族の話をすると起きること
RMMSの経営計画合宿で家族の問題に踏み込むと、参加者の表情が変わります。
心のどこかでその話を求めていたのだと思います。救われたという表情をされます。
経営の話をしている場で「家族のことも考えましょう」と言われる経験が、多くの経営者にとって初めてです。自分の弱さを見せる場が、これまでなかったんです。
「自分のこともできていない人」が他人に偉そうに言っても
他のグループでも家族の話を扱っているところはあります。心理学の先生を招いて、家族関係のワークショップをやる、というパターンです。
しかし、その講師の家族が激烈にいじめられて転校を繰り返していたり、この前まで講演の舞台袖に来ていた奥さんと散々揉めて離婚していたり——自分ができていないケースが目につきます。
家族の問題を自分で解決できない人が、他人に偉そうに言っても実効性が伴いません。これは、自分で汗をかかないコンサルの言うことに根拠がないのと同じ構図です。
経営計画に「家族」を書く
RMMSの経営計画合宿では、通常の計画では避ける核心部分にも踏み込みます。「親父に頭を下げる」「妻にこう伝える」「息子との関係をこう変える」——具体的なアクションを計画に書き込みます。
経営計画に家族を入れるなんて、と最初は抵抗する参加者もいます。でも書いてみると気づきます。家族の問題が経営に影を落としていたことに。そこに手を打てれば、経営も動き出します。
家族の関係改善を経営計画に組み込む——これは私が自身の経験から独自に発展させた視点です。