10年以上前、僕は知り合いの事業者さんに「こたつ記事を量産しましょう」と勧めていました。
こたつ記事というのは、自分で取材も体験もせずに、ネットで調べた話をまとめ直しただけの記事のことです。こたつに入ったまま書けるから、こたつ記事。とんかつの作り方みたいな、その店の商売とは直接関係のない話題でもかまわない、という勧め方をしていました。
当時は、ホームページで何かしようという中小企業がまだそんなに多くなかった時期です。相談を受けても、こちらから出せる手がいくつもあったわけではありません。書ける人が書けるだけ書く。それが一番確実に効く手だったんですね。
ですから、本数で押す。そう勧めていましたし、本当に本数だけで検索の1ページ目に入れるのかどうか、別のサイトで実験までしています。
結果は、入れました。そして今は、同じことを人に勧めません。
偉そうに書いていますが、やっていた当時の僕は、それが正しい方法だと思っていました。今回は、その実験の話と、やめたあとにブログの作り方をどう変えたかという話です。
何記事書いたら1ページ目に入れるのか、実験しました
やったことは、記事を積んで順位を見るだけです
一つのサイトを用意して、こたつ記事を積んでいって、何記事目で狙ったキーワードの1ページ目に入れるのかを見る。
やったことは、これだけです。
記事の中身は、さっき書いたとおりのこたつ記事です。自分で試したことも、自分で見たことも、一行も入っていません。ネットで調べたことを、読みやすく並べ直しただけ。
あの頃は、意外と早く行けたんです
で、結論から言うと、届きました。しかも僕が思っていたより早かったんです。
なぜ早かったのか。これは今から振り返っての僕の見立てなので、そのつもりで読んでください。当時は、同じテーマについて書かれたページの数が、今とは比べものにならないくらい少なかったんですね。競争相手が少ないところに、真面目に本数を積む人が現れたら、そりゃあ上に出ます。
書き手の側の事情もありました。文章を書くのは、当時はまだ手間のかかる作業です。1本書くのに半日かけていたら、誰も1日に何本も出せません。本数を出せること自体が、それなりの努力の証明になっていた時期だと思います。
だから検索する側も、本数を積んだサイトを素直に拾ってくれた。そういう時代でした。
今はもうダメだと思っています
では今、同じサイトを同じやり方で作ったらどうなるか。僕はもうダメだと思っています。
当時と今で、何が変わったのか。比べる相手をはっきりさせておきます。比べているのは、10年以上前の検索エンジンと、今の検索エンジンです。
- 同じテーマで書かれたページの数が、当時とは桁が違う
- 文章を用意する手間が下がって、本数がその人の努力を示さなくなった
- 検索する側も、寄せ集めの記事とそうでない記事を見分ける手を持つようになった
三つとも、僕が勧めていた手法の前提を崩す方向に動いています。本数を積めば入れる、という話は、競争相手が少なくて、本数を出すのが大変だったからこそ成り立っていたんですね。その二つが両方とも消えたのに、やり方だけ当時のまま残しても効きません。
これ、僕にとってはけっこう寂しい話でもあります。あの頃に僕が勧めて、実際に頑張って書いてくれた人がいるわけですから。ただ、効かなくなったものを効くと言い続けるほうが、その人に対してよほど失礼だと思っています。効かなくなったのなら、代わりに何が効くのかを持っていく。それが僕の仕事です。
増えた分が、そのまま戻ってくるんです
一時的には増えるから、続けてしまうんですね
「じゃあ、今こたつ記事を量産したら、アクセスはまったく増えないんですか」そう聞かれると、答えは違います。

増えます。たとえば1日5記事みたいなペースで投稿すれば、こたつ記事でもアクセスは一時的に増えるんです。やっかいなのは、この増える部分なんですよ。まったく増えないなら、誰もやめる判断に迷いません。
増えるから、続けてしまうんですね。数字が動いているうちは、自分のやっていることが間違っているとは思えません。むしろ、もっと書けばもっと増えるはずだと考えます。その勢いで人を雇ったり、外注の本数を増やしたりする人もいます。
気持ちはわかります。ただ、増えていく数字と、実際に起きていることは別なんですね。
30日以内に、増えた分が戻ります
増えた分は、30日以内にゼロに戻ります。
実際にそういうデータがありますし、僕自身が見てきた範囲でもそのとおりでした。
Googleもアホじゃないんですね。どこかから持ってきただけの記事を、いつまでも上に置いておく理由がありません。
ここで一つ、注意しておきたいことがあります。マイナスにはならないんです。書く前より下がるのではなく、増えた分がそっくり落ちて、ゼロになる。
つまり、投稿にかけた時間と外注費だけが出ていって、残るものがゼロになります。罰を受けるわけではないので、やった本人には何が起きたのか分かりにくいんですよ。数字が戻ったのを見て「本数が足りなかったんだ」と考えて、もう一段アクセルを踏む人までいます。
さっきの寂しい話は、ここにつながります。損はしていないのに、何も残っていない。その状態を1年続けても、来年の商売は何ひとつ変わっていません。だとしたら、同じ時間を何に使えば残るのか、という話に組み替えたほうがいいわけです。
答えは、ずっと前から決まっています。その記事にしか書いていないことを、1本入れることです。
質問シートの終盤に、実体験を書く欄を置きました
AIにネタを考えさせると、ろくなことになりません
いま僕は、ブログを書くための質問シートを何人かの方にお渡ししています。業種を限定せず一般用にふんわり作ったもので、箇条書きの質問に打ち込んでいくと、そのまま記事のもとができるという代物です。
なぜこんなものを作ったのか。周りでブログをやっている人がいつも言うんですが、AIにブログのネタそのものを考えさせると、ろくなことにならないんですよ。
ネタから考えさせると、どこかで見たような話が出てきます。当たり前で、ネットに転がっている話を材料にしているんですから。それを整えて出したら、結局こたつ記事です。機械で作ったこたつ記事は、人が書いたこたつ記事より速く量産できるというだけで、30日後の結果は変わりません。
自分で調べて書いたつもりでも、同じことが起きます。ネットで拾った話を自分なりに解釈して記事にする。拾ってきた話って、元の情報からして大体間違ってるんですよね。
そもそもの話をすると、ネットに転がっている記事は、あなたの商売のために書かれていません。検索してきた人に読んでもらうこと、それ自体が目的で書かれています。読んだ人の商売がよくなるかどうかは、書いた側にはあまり関係ないんですよね。
だから終盤に「あなたの実体験・事例」を置きました
そこで、質問シートの終盤に「あなたの実体験・事例」を書く欄を置いて、必須にしました。
ここを空欄のまま通せないようにしてあります。理由は単純で、この欄が埋まっていない記事は、あとからどう整えてもパクリ記事にしかならないからです。
なぜ終盤に置いたのかも、少し説明しておきます。いきなり最初に「あなたの体験を書いてください」と言われると、たいていの人は手が止まるんですよ。何を書けばいいのか分からないからです。
ところが、その前の質問に順番に答えていくと、頭の中がその話題でいっぱいになります。そこまで来てから体験を聞かれると、すっと出てくるんですね。中身の問題ではなく、順番の問題です。
箇条書きに答えるだけで、オリジナルが入ります
この工程の何がいいかというと、書く人が文章を組み立てなくていいところです。
やることは、箇条書きで並んだ質問に答えるだけ。それだけで、その人しか持っていない情報が記事の中に入ります。
二つのやり方を並べてみると分かりやすいと思います。こたつ記事の書き手は、ネットで調べた情報を、自分の言葉に置き換える作業をしています。質問シートを埋めた人は、自分の現場で起きたことを、そのまま渡しているだけです。手間でいえば、後者のほうがずっと軽いんです。なのに、記事に残るものは逆になります。
- 調べて書いた記事は、同じことを調べれば誰にでも書ける
- 現場で起きたことを書いた記事は、その現場にいた人にしか書けない
- 30日たって残るのは、後者だけ
現実に、僕がやり方を変えたのはこの一点です。本数を追うのをやめて、1本ごとに「これはうちにしか書けない話か」を確認するようにしました。
日本語の巧拙は、どうでもいいんです
最後にもう一つだけ。
「文章がうまく書けないので、ブログは向いていません」そうおっしゃる方が、とても多いんです。社長業をやってきた方ほど、人前に出す文章を自分で書いた経験がなくて、そこで止まってしまう。分かります。下手な文章を看板に出すのは、恥ずかしいですからね。
でも、日本語の答え方はどうでもいいんです。
質問シートに書き込む段階で、文章として整っている必要はありません。言葉が足りなくても、順番がぐちゃぐちゃでも、単語だけ並んでいてもかまいません。整えるのは後の工程でできますから。
整えられないのは、中身のほうなんです。その現場にいなかった人間には、そこで何が起きたのかを埋めることができません。うまい文章はあとから足せるけれど、うちにしかない情報はあとから足せない。
だとすると、やることは決まってきます。記事を量産する前に、自分の実体験を1本入れる工程を、作業の順番の中に組み込んでおく。書きぶりを直すより先に、そこを置いておく。
僕が10年以上前にやった実験は、本数だけで1ページ目に入れることを証明しました。今はその実験を、もうそのやり方は成立しないという証明のほうに使っています。
