値段の高い競合が、どうしても気になる。
今回は、その気持ちの片づけ方の話です。先に言っておくと、僕はずっと「横綱相撲でいい、気にするな」と言ってきました。それでも気になるなら、やり方があります。
ポジションは、自分の強みからは出てきません
どなたのどんな話かを先に書きます。畳店の社長さんからのご相談で、産地に通っているような、値段の高い競合が近くにいる。その店がどうしても気になる、という話でした。
強みを探すと、相手と同じことを書いてしまいます
差別化と聞くと、たいていの方は自社の強みを探します。うちの良いところはどこか、と。
ところが、書き出してみると出てくるのは「丁寧な仕事」「創業から◯年」「地元密着」あたりです。そして、これは相手も書いています。だいたい同じことを書き合って、最後は値段で比べられる。
なぜ同じになるのかというと、自社を見ているからなんですよね。自分の良いところは、同業なら同じように持っています。そこを掘っても、差は出ません。
見るのは、向こうがやっていないほうです
じゃあどこを見るのかって話ですよね?向こうです。しかも、向こうがやっていないほうを見ます。
当日はこう言いました。
「向こうがやってないことを全部言うんです。ふすまも社内生産、素材から一貫生産、農薬がかかってないのは当社だけ」
これ、順番が逆なんです。自社を見てから比べるのではなく、相手を見てから自社に戻る。そうすると、自分では当たり前だと思っていたことが、急に武器になります。
社内でふすままで作っているのは、自分にとっては昔からの作業です。売り文句だと思っていない。でも、外注している店から見れば真似できない話なんですよね。
比較広告を打つのは、完全に仕掛けるということです
ここは先にお伝えしておきます。比較広告を出すというのは、完全に仕掛けるということです。
相手も気づきます。地域によっては角も立ちます。やるなら徹底する。中途半端に匂わせるのがいちばん良くありません。
そういう覚悟が要る手なので、まずそこを決めてから始めてください。
列挙を、チェックリストに変えます
ここから実際の作り方です。
並べ終えると、選択肢が1つになります
やることは、そんなに難しくありません。向こうがやっていないことを、ひたすら箇条書きにする。
- ふすまも社内で生産している
- 素材から一貫して自社で作っている
- 使っているのは、農薬を使わない国内産の和紙
そして、それをチェックリストの形にします。
「チェックリストにしたら、もうこの店しかないよね、ってなる」
ここは案外大事で、こちらは何も主張していないんですよね。項目を並べて、印を付けているだけ。主張していないのに、読んだ人の中で結論が出る。
正真正銘、並べただけです。説得の言葉が1つも要りません。
ちなみに、他社の商品に何が入っているかを断定する必要はありません。書くのは自社側の事実だけでいいです。そのほうが強いですし、後で困ることもありません。

リズムの強い一行は、集めやすく当てやすい
もう一つ、コピーの話をします。このケースでいちばん効くのは、農薬を使っていない国内産の和紙という角度でした。
「『私の肌に農薬を塗り付けないで』とか、強いですよ。そういうリズムの強いコピーは、すごく集めやすい。当てやすいんです」
言葉のリズムが強いと、読んだ人の中に残ります。残ると、人に言いたくなる。説明が長いコピーは、正確でも運ばれません。
そういう難易度の高い言い回しを最初から捨ててしまえば、伝わるまでの距離が縮まります。短くて、口に出しやすくて、少し過激。そこを狙ってください。
打つ地域と時期を選びます
最後は、どこにいつ出すかです。
刺さる地域と、刺さらない地域があります
この安全・毒性の角度は、どこでも当たるわけではありません。
オーガニック志向の強い地域では、よく当たります。人口の多いところほど、その層が厚い。逆に、自然が当たり前にある地域では、かえって刺さりません。わざわざ言われるまでもない、という受け取られ方になります。
だから、都市部の商圏と、そうでない商圏で出し分けます。同じチラシを全域に撒くのではなく、角度を変える。
この話をすると猛烈な反論にあってしまうことがあります。うちの地域は全部同じだ、と。でも、配る先を分けるだけならコストは変わりません。試してみて損はないと思います。
早割チラシとは役割が違います。比較広告は春から
時期の話をします。比較広告は、年末の早割チラシとは別物です。
早割は「年内、まだ間に合います」という緊急性の広告で、いま動いてもらうためのものです。比較広告は、この店を選ぶ理由を作る広告で、すぐには動きません。
役割が違うので、混ぜないでください。早割チラシはそのままにして、比較広告は春から展開する。これが、いちばん失敗しない組み方です。
借り物のキャラクターから抜けます
最後に、少し別の角度の話をします。
このケースでは、他の職人さんの写真を借りて、その分の売上の一部を渡すという売り方をしてこられました。その方の名前と顔で売るやり方です。
もう卒業していいと思います。自分が作ったものとして前に出たほうが、確実に強い。
借り物のキャラクターがないと成り立たない売り方は、いつまでも足元が不安定なんですよね。相手の都合が変われば止まりますし、渡している分だけ利益も薄い。
そしてこの手法は、すべての商売で通用するわけではないかもしれません。ただ、比較広告で前に出ると決めた以上、顔は自分のほうがいい。向こうがやっていないことを並べるのは、こちらが誰なのかをはっきりさせる作業でもあります。
強みが見つからないと感じているなら、探す方向を変えてみてください。見るのは自分ではなく、向こうです。
