最初に、ちょっと変なことを言わせてください。
僕は、キャンペーンとかフェアとか、ほとんどやらないんです。型を持っていなくて、毎回ゼロから考える。理由は単純で、お客様の身になって考えないと、答えは出ないと信じているからです。
先日の問題解決ワークでも、ある会員さんが夏の窓まわりの商品——断熱カーテンや内窓、屋外の日除けシェードを「どう値引きして売ろうか」と相談に来られました。
でも、話しているうちに、結論はこうなりました。
「これ、値引きいらないですよ」と。
なぜそうなったのか。順を追ってお話しします。
「フェア」から考えると、なぜ行き詰まるのか
フェア・セール・キャンペーン。この枠から企画を考え始めると、たいてい行き詰まります。
理由は2つあって、1つは、どうしても一般論になること。割引、特典、期間限定。どこの店でもやっていることに落ちていきます。
もう1つは、この枠で考えると、商品を1つに絞らないといけなくなること。「早割セール」と言った瞬間、「で、何を主役にする?」で悩み始める。これがしんどいんです。
出発点が違うんですね。
出発点は、商品ではなくお客様です。お客様は何に困っているか。暑いのが嫌。涼しくしたい。エアコン代を下げたい。西日が、朝日がつらい。それだけなんです。
だったら見出しは「夏のフェア」ではなく、「暑い夏を、涼しい部屋で過ごすためのリフォーム特集」。同じ商品でも、お客様から見える景色が変わります。
商品の出し方も同じで、単品をズラッと並べない。パッケージにします。「これとこれを付けて、いくら」と。「ひんやりパック」のような名前で、お得版とフルセット版を用意して、選ぶだけにしてあげる。
ここで一つ大事なのは、商品名そのものからは、むしろ離れてほしいということ。専門的な商品名を覚えてもらう必要はないんです。お客様は商品名を知りたいんじゃなくて、涼しくなりたいだけですから。
値引きの前に、「体感」と「数字」を用意する
そもそも、なぜ「どう値引きするか」という相談になるのか。
答えは、価値が伝わっていないからです。価値が伝わっていない商品を動かそうとすると、値段を下げるしか手がなくなる。だから値引きの話になる。
ということは、やることは値引きではなく、値引きの前にあります。
1つは、体感です。
たとえば、白熱電球に普通のガラス越しに手をかざしてもらう。熱い。次に、断熱塗装をしたガラス越しに手をかざしてもらう。全然違う。これだけで、「効く」が頭ではなく体で分かります。日射対策のUVカットシートでも、同じ実演ができます。言葉で説明する100倍、効きます。

もう1つは、数字です。
お部屋の窓まわりの温度が、何度下がるのか。これをデータで見せる。「これだけ涼しくなりますよ」が数字で出れば、値引きの話はもう出てこないんです。
説明が難しい商品は、「暑さ診断」を入口にする
窓まわりは、説明しないと価値が伝わらない商品です。こういうものは、一発で売ろうとしない。間に1段はさんで、2ステップにします。

入口に置くのが「お部屋の暑さ診断」です。
いきなり商品の案内をするのではなく、商品がよく分からない人に、まず診断という違う入口から入ってもらう。実際に窓の昼と夜の温度を測って、現状を調べて、レポートをお出しする。
温度計は、大げさなものは要りません。飲食店が冷蔵庫の温度管理に使う、24時間トラッキング型のもの(6,000円くらい+通信用のモバイルルーター)が通販で手に入ります。これで昼夜の温度をきちんと記録する。(測っている最中に暑くてエアコンを入れてしまうと意味がないので、測り方だけは先に決めておきます。)
そして、ここが診断を入口にする一番のメリットなんですが、窓の大きさで効果は変わります。診断の数字を見ながら、「これだけ大きい窓なら、カーテンタイプでは足りませんね。内窓のほうが効きます」と、その場で具体的に提案できる。商品を売り込むのではなく、お客様の家の数字を一緒に見て、最適なものを選ぶ形になります。
希少性も、自然に作れます。「今回は5名様限定」。これは盛った希少性ではありません。お宅に伺って窓の温度を計測し、後日あらためて結果をご説明する——この訪問と調査に手間と時間がかかるので、本当に5名が限界なんです。資料づくりそのものに時間がかかる、という話ではありません(今どき、レポートは早く作れますから)。理由が本物だから、嫌味になりません。
その場で組み立てた、コンセプトの骨子
参考までに、ワークの場で口頭で組み立てたものを載せておきます。完成した告知文というより、コンセプトを凝縮した骨子です。これくらいシンプルでいい、という見本にしてください。
40度を超える猛暑。夜中でも30度を下回らない熱帯夜も、珍しくない夏です。日本の住宅ではとても対応できないこの暑さに、エアコンも限界を迎えています。
そこで今回、暑さに苦しむご家庭にご案内です。お部屋の気温を上げてしまう日差しや熱から、あなたを守る窓回りリフォームをご提案します。このセットは、お部屋が熱くなる原因である窓回りの温度上昇を抑え、エアコンの効果を最大化し、涼しい夜を過ごしていただくためのものです。
まずは、お部屋の暑さ診断から。「思ったより涼しくならなかった」となってはいけないので、事前に診断させていただきます。お昼と夜の温度を計測し、現状の窓の状態を調査したうえで、断熱効果についてレポートをお出しします。
なお、お部屋に伺って計測・調査し、後日あらためてご説明するお時間をいただくため、今回は5名様のみの受付とさせていただきます。
商品説明から入っていないのが分かりますか。お客様の困りごと(暑い)から入って、診断という入口に誘っている。これが「お客様の身になって考える」ということです。
そして、ここまでやれば、お客様は価値を体と数字で納得しています。だから、値引きの話にはならない。これが、最初に申し上げた「値引きいらない」の正体です。
おわりに
広告の役割は、問い合わせを取ることだけです。細かい提案は、来てから詰めればいい。だから告知も、全部を語ろうとしなくていいんです。
商品も、全部を1つのパッケージに詰め込む必要はありません。たとえばマンションだと外付けの日除けが付けられない、といった事情もあるので、そこは現場でお客様ごとに組み替えます。
最後にもう一度。「どう値引きするか」と考え始めたら、いったん止まってください。値引きの前に、便益を伝える。体感させる。数字で見せる。この順番でやると、値引きは要らなくなります。
しかも、これは売り手だけが得をする話ではありません。お客様は、きちんと説明を受けたうえで、自分に合った商品を選べる。こちらは、調査の手間はかかるけれど、値引きをせず、正当な価格で取引できる。値引き合戦から抜けると、お互いに得をするんです。



