「販促を頑張っているのに反応が薄い」「それどころか、たまにお客様を怒らせてしまうことがある」。そんな悩みを抱えている社長は、少なくありません。DMやクーポン、メルマガを全顧客に一斉配信することが、手厚いサービスだと思い込んでいる会社は多いのですが、実はそこに落とし穴があります。
問題解決ワークは、参加者が自分の会社の実案件を持ち寄り、その場で一つひとつ順番に扱っていく会です。先日のワークで、まさにこの落とし穴を踏んでしまった社長の相談がありました。良かれと思って続けてきた販促が、ある日突然、強いクレームに変わってしまったんです。今日は、その場で見えてきた原因と、出した判断を紹介します。
良かれと思って送った特典が、なぜ怒りに変わったのか
ある地域密着のサービス業の社長は、誕生日を迎えたお客様全員に、特典クーポンをメルマガで一斉配信していました。長く続けてきた、いわば定番の販促です。全員に届けることが、良かれと思ってのことだったのは間違いありません。
ところが店舗が1拠点しかないその会社に、遠方にお住まいのお客様から、感情のこもった抗議のメールが届きました。趣旨は「わざわざ来いというのか」という、かなり強い内容です。せっかく特典を用意して喜んでもらおうとしたのに、結果はまったくの逆でした。相談に来られた社長も、正直なところ面食らっていました。良かれと思ってやっていたことが、なぜここまで怒りを買うのか、すぐには判断がつかなかったのも無理はありません。
原因は「届く相手のズレ」でした
ワークの場で、参加者みんなで一緒に整理していくと、原因は特典の中身でも、文面の書き方でもありませんでした。誰に届けるかがズレていた、というのが答えだったんです。
店舗が1拠点しかないのに、遠方のお客様にまで同じ特典を届けてしまえば、来店できない人に向かって「来てください」と言っているのと同じになります。これでは喜ばれるどころか、届いた瞬間にがっかりされてしまいます。全顧客への一斉配信は、一見すると公平で親切に見えます。ですが実際には、店舗が対応できるエリアの外にいる人にとって、意味がないどころか、気分を害する内容になってしまうんです。

言い換えると、特典そのものは何も悪くありませんでした。悪かったのは、届ける範囲を一度も見直さずに、ずっと同じ配り方を続けていたことです。長く続けてきた販促ほど、こういう見直しが後回しになりがちなんですよね。同じ内容でも、届く場所が変われば受け取り方はまったく変わります。近くのお客様には嬉しいお知らせでも、遠くのお客様には的外れなお知らせになってしまう、ということです。
その場で出した判断は「たたむ」でした
原因が「届く相手のズレ」だとはっきりした以上、対応は難しくありませんでした。配布の範囲を、店舗が実際に対応できるエリアのお客様に絞るか。それとも、誕生日クーポンという施策自体をやめるか。ワークではこの二択が示され、その場で施策をたたむ方向に舵を切りました。
販促というと、つい「もっと工夫して続けよう」「せっかく始めたのだからやめるのはもったいない」と考えがちです。ですが今回はその逆でした。工夫を足すのではなく、届ける相手が合っていない施策を、思い切って手放す判断のほうが早かったんです。続けてきた時間が長いほど、やめる決断には勇気がいります。それでも、合わない相手に届け続けることで失うお客様の信頼のほうが、よほど重いというのが、この場で出た結論でした。
販促は足すよりも、届く先を直すほうが早い
この話から見えてくるのは、販促の反応が薄いという状態を、いつも「もっと魅力的な特典を」「もっと頻度を増やして」という足し算で解決しなくていい、ということです。反応が薄い、たまに怒られる、という状態が続いているなら、まず疑うべきは中身の魅力ではなく、届けている相手が本当に合っているかどうかです。
全顧客に同じものを配るのは、一見手間がかからず平等に見えます。ですが、対応できないお客様にまで届いてしまえば、それは親切ではなく、ただの混乱です。合わない相手にまで広げて届けるより、合う相手にだけ絞って届けるほうが、結果として喜ばれますし、クレームのリスクも減ります。同じ手間をかけるなら、広く浅く投げるより、届くべき人にだけ確実に届けるほうが、費用も気疲れも少なくて済むんです。販促を考えるとき、つい内容から決めたくなりますが、先に届ける範囲を決めてから内容を組み立てるほうが、無駄もクレームも減らせます。
おわりに
今回のケースが教えてくれるのは、販促を見直すときにまずやるべきは「何を足すか」ではなく「誰に、どこまで届いているか」を棚卸しすることだ、ということです。DM・クーポン・メルマガを、いま自社がどんな範囲のお客様に、どんな基準で送っているか。一度並べてみるだけで、やめるべきもの、絞るべきものが見えてくるはずです。
長く続けてきた販促ほど、見直す機会は自然には訪れません。誰かに指摘されるか、今回のようにクレームという形で気づかされるまで、そのまま続いてしまうものです。だからこそ、怒られる前に、一度自分の目で棚卸ししておく価値があります。
自社の販促を、誰にどこまで届けるべきか。一人で判断に迷うところは、よかったら一度、あなたの販促を一緒に棚卸しさせてください。
